全国の気象台では、一日の空模様を記録する「天気概況」を継続的に記録している。「晴れ」や「曇り一時雨」といった表現は想像しやすいが、中には「晴れ時々曇り一時雨、雷を伴う」のように、一見すると理解が難しい複雑な空模様も存在する。
「ワケワカラン概況」とは何か
このような複雑な天気概況は、大気の状態が不安定な日に現れる。気象予報士の布施谷航記者が、その謎を解明すべく調査に乗り出した。
天気概況がデジタル化された1967年から2025年までの関東地方1都6県の記録を分析したところ、「晴れ」「雨」「曇り」「雷」の4つの要素がすべて含まれる「ワケワカラン概況」には地域差があることが判明した。最も多かった都市は栃木県の宇都宮市で285日。次いで前橋市(189日)、熊谷市(169日)が続く。
宇都宮で実態を調査
実際の空模様を確認するため、最も記録の多い宇都宮市を5月下旬に訪れた。この日は雲の合間から晴れ間が見えるものの、雨や雷の気配はなかった。宇都宮駅近くの郷土玩具店を営む小川春子さん(82)に「ワケワカラン」な空模様について尋ねると、次のように語った。
「午前中は晴れているのに、夕方に遠くの空が黒くなり、だんだん雲に覆われる感じです。冷たい風が吹いたと思ったら急に雨が降り出し、雷が鳴ることもあります。しばらくするとまた晴れるんですけどね」
栃木県庁近くの八幡山公園では、俳句仲間という80代の女性2人が「天気がコロコロ変わるのは夏場に多いですね。そんな時は天気予報で『大気の状態が不安定』と言っていますよ」と教えてくれた。
「大気の状態が不安定」のメカニズム
確かに「大気の状態が不安定」という言葉は夏場によく耳にする。関東平野の奥に位置する宇都宮や前橋、熊谷は海風が吹き込みにくく、気温が上昇しやすい。温められた空気は上昇気流となり、積乱雲を発生させる。晴れていた空が曇り、やがて雨が降り出し、時には雷を伴う大雨となることもある。
この変化はまるで赤ちゃんの機嫌のように、笑ったかと思えば泣き出し、怒り出す。分かりにくい天気概況は、まさにそんな大気の状態を示しているのだ。
記録の増加傾向と新たな疑問
「ワケワカラン概況」の推移を見ると、1989年4月以降に登場し始めた。気象庁によると、この時期から気象データが自動化され、記入要領も改められて「雷を伴う」という表現が記入されるようになったという。大気の状態が不安定になりやすい宇都宮、前橋、熊谷で記録件数が多いのはそのためだ。
しかし、奇妙な点も見つかった。2010年代後半以降、東京都心を除いて不安定な日が増加傾向にあるのだ。気象庁によると、観測精度の向上が原因ではないという。温暖化によって地面がより温められ、不安定の度合いが増している可能性がある。一方、東京都心で増加傾向が見られない理由は不明だ。
やはり、この現象は「ワケワカラン」と言わざるを得ない。
天気概況とは、全国の気象台などの気象官署で観測員が確認した天気を簡潔に記録したもの。「晴」や「雨」など、最も多くの時間を占めた天気を記入し、空模様が変化した場合には「一時」や「時々」などの言葉で追加する。雨や曇りに加えて「雷」や「大風」などが発生した場合には「伴う」を用いる。



