漂着物学の先駆者・石井忠さんの収集品、福岡・古賀市に展示室開設
漂着物学の先駆者・石井忠さんの収集品、古賀市に展示室

海岸に打ち寄せられた漂着物研究の第一人者として知られ、「漂着物学会」初代会長を務めた石井忠さん(一九三七~二〇一六年)が国内で収集した資料を紹介する展示室が、ゆかりの福岡県古賀市に開設された。没後十年を機に、漂着物を学問に高めた功績に焦点を当て広く発信しようと、市教育委員会が市立古賀東中学校の空き教室を整備。後進の研究者らが資料の分類などで協力した。

漂着物学会の現会長が語る展示室の意義

「海や環境を考える入り口に」。約三百人の会員を抱える漂着物学会の現会長で、東大総長特使の道田豊さん(六十八)は五月三十一日、古賀東中での記念講演会で展示室開設の目的を語りかけ、高校生や大学生を含む幅広い年齢層の約百二十人が聞き入った。

学生たちは講演会に先立ち古賀市の海岸で、石井さんが推奨したビーチコーミング(海岸での漂着物の収集・観察)にも参加。講演後は、連れ立って展示室を訪れ、ガラス棚に展示された動物の骨や貝殻などを興味深そうにのぞき込み、スマートフォンで撮影していた。

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多彩な展示資料とその背景

展示資料は、ガラス瓶やライター、仏像など多岐にわたる。日本だけでなく中国や韓国など海外の製品も多く、それぞれにお国柄がにじむ。総数約千点を種類や漂着の背景などに応じて分類、展示しているが、収集物全体のごく一部。さらに膨大な数の資料は、展示室に隣接する倉庫に保管されている。

市教委と学会の連携で実現

市教委などによると、全ての資料は元々、石井さんの自宅にあった。ただ、遺族による管理が難しくなったため、市教委が散逸や劣化を防ぐため昨年から公的施設での管理と常設展示を検討。場所を古賀東中の空き教室に決め、漂着物学会の会員たちが、分類や展示などの作業を担った。漂着物を常設展示の一部に組み入れている博物館は全国に複数あるが、古賀市のように漂着物に絞った展示施設は珍しいという。

さらに、石井さんには約一万冊の蔵書もあるため、同中の別の空き教室に「考古学図書室」も整備。三月には展示室と同時にオープンし、土、日曜日に予約制の見学会が開かれてきた。

見学方法と今後の展望

今月からは両施設を管理する市立歴史資料館に二週間前までに申し込めば、月曜日以外は入室できるようになった。事前予約制は学校の授業や行事での活用を優先するためで、火~金曜日は最大で五人程度、土、日曜日と祝日は二十人まで受け付ける。

石井さんとの親交が深かった道田さんは「実物を見て環境の変化が分かる利点は大きい」と漂着物研究の意義を語り、あらゆる漂着物を研究対象としてきた石井さんをたたえている。

展示室、図書室とも入場無料。予約や問い合わせは市立歴史資料館(〇九二・九四四・六二一四)へ。同館は「中学校への問い合わせは控えてほしい」と呼びかけている。

石井忠さんの功績と生涯

石井忠さんは福岡市生まれ。中学・高校教諭、九州産業大非常勤講師を経て、二〇〇〇~十三年に古賀市立歴史資料館長を務めた。海岸の漂着物を通じて歴史や文化、民俗、環境などを読み解く学問分野を確立し、〇一年には全国組織の「漂着物学会」を結成した。同学会のホームページに掲載されている「設立趣意書」には、石井さんら八人の連名で「大部分は塵芥(じんかい)」としたうえで、「動・植物から歴史・民俗まで種々の内容を包含しています」とつづっている。著書には「ビーチコーミングをはじめよう〈海辺の漂着物さがし〉」「漂着物考―浜辺のミュージアム」などがある。

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