創業60年の老舗製麺所、店主が守り続ける讃岐うどんの味
香川県高松市にある名店「松下製麺所」では、創業から60年間、店主が一貫して手打ちうどんを作り続けている。細めの麺に昆布とカツオのだしをセルフで注ぐシンプルなうどんは、多くの人々に愛され、昼時には長い列ができるほどだ。
偶然から始まったうどん職人の道
店主がうどん店を始めた経緯は、偶然の重なりだった。高校卒業後、就職せずにいたところ、店主が亡くなったうどん製造・卸売店の配達などを手伝うようになった。数か月後には、その店を引き継ぐことになった。当時はうどんを打った経験もなく、師匠もいない状態だったが、「やってみよう」という思いで挑戦した。
1966年に「松下製麺所」を開業。引き継いだ大衆食堂や八百屋などの契約先に麺を卸した。当初は「麺が硬い」などの苦情が相次いだが、試行錯誤を重ね、独自のやり方を見つけていった。
試練を乗り越えて成長した店
「ブリキ職人だった父親同様、自分も職人気質で、とことんやるタイプだったのかも」と店主は振り返る。4年後に現在の中野町に店を移し、1975年からはセルフ方式でのうどん店を始めた。
何度も壁を乗り越えてきた。かつて「高松砂漠」と言われた深刻な水不足の際は、タンクに水をためたり、近所の井戸から水をもらったりして営業を続けた。外出が制限されたコロナ禍では、店の客も卸先も激減したが、それでも店は休まなかった。
国内外から注目される人気店に
現在は、地域の常連客はもちろん、讃岐うどんめぐりを楽しむ国内外の観光客が足を運ぶ。2017年には人気ドラマ「孤独のグルメ」にも登場し、一躍注目を集めた。
店主が大切にしているのは、「自分自身がおいしいと感じるうどんを提供すること」だ。今も原材料費などの高騰に悩む日々が続くが、「体が動く限りは続けたい」と、変わらぬ味を守り続けるつもりだ。60年の歴史が刻まれた老舗のうどんは、これからも多くの人々に愛され続けるだろう。



