海外勤務中の過労死、遺族が問う企業責任 見えづらい労働環境の実態
海外勤務中の過労死 遺族が問う企業の責任

海外勤務中の過労死、遺族が企業の責任を問う

グローバル企業で働く社員が、海外の関連会社に出向したり長期出張したりすることは今や珍しいことではありません。しかし、日本とは異なる厳しい労働環境に置かれた結果、過労死に追い込まれる働き手も少なくないのです。その遺族たちが中心となって結成した「海外労働連絡会」が発足して間もなく1年を迎えます。果たして企業の対応は変化しているのでしょうか。

中国出向中に突然の死

験馬綾子さん(49)が夫の浩司さん(当時35歳)の様子に違和感を覚えたのは、2013年6月ごろのことでした。川崎重工業の社員だった浩司さんは、同年4月から中国・安徽省にある川重と中国法人の大手セメントメーカーとの合弁会社に出向していました。

時差はわずか1時間。浩司さんと綾子さんは毎朝、日本時間の午前8時から15分程度、ビデオ通話の「FaceTime」を使って顔を見ながら話をすることを習慣にしていました。それ以外にも、浩司さんが同僚と飲みに行って歓談する様子や、自ら手料理を作る姿を見せてくれることもありました。休日には通話をつないだまま、子供に絵本を読んであげることもあったのです。

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遠隔地から感じた不安

そんな穏やかなやりとりの最中、ある出来事が起こりました。当時幼稚園に通っていた子供の頭についていたシラミを駆除する作業に必死になっている綾子さんの様子を、浩司さんが黙って見ているだけだったのです。綾子さんはその態度にいらだちと不安を感じました。

そして、7月10日の朝。それまで毎日続いていた連絡が突然途絶えてしまったのです。この瞬間から、綾子さんと子供たちの長く苦しい闘いが始まりました。

海外労働連絡会の活動

浩司さんの死をきっかけに、同じように海外勤務中に家族を失った遺族たちが集まり、「海外労働連絡会」が結成されました。この組織は、海外での労働環境の実態を可視化し、企業に対して適切な責任を求めることを目的としています。

海外勤務における課題は多岐にわたります。現地の労働法規や文化の違い、言語の壁、そして本国からの管理が行き届きにくいことなどが挙げられます。特に、「見えない労働」として長時間労働や過重な業務負担が表面化しにくい傾向があります。

企業の対応は変わったか

連絡会の発足から約1年が経過しましたが、企業側の対応には依然として課題が残されています。一部の企業では、海外勤務者の健康管理や労働時間のモニタリングを強化する動きが見られるものの、全体としての改善は限定的です。

遺族たちは、単なる補償だけでなく、再発防止策の徹底を強く求めています。具体的には、以下の点が重要だと指摘しています。

  • 海外勤務前の十分な健康診断とストレスチェック
  • 現地での労働環境の定期的な監査
  • 緊急時の連絡体制の確立
  • 家族へのサポート体制の整備

求められる社会的責任

グローバル化が進む現代において、企業の社会的責任は国境を越えて問われるようになりました。海外勤務者の安全と健康を守ることは、企業の持続可能性にも直結する重要な課題です。

験馬綾子さんをはじめとする遺族たちの訴えは、単なる個人的な悲劇を超えて、国際的な労働環境の整備という大きなテーマを投げかけています。彼女たちの活動が、より安全で公正な労働環境の実現につながることが期待されます。

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