栃木県宇都宮市飯田町の県中部自動車学校で、目の不自由な人が自動車の運転を体験する特別なツアーが開かれた。同校での実施は昨年12月に続き2回目で、全国各地から集まった12人の参加者が、自らの手でハンドルを握る夢を実現させた。
運転体験の仕組み
この体験ツアーは19日から20日までの1泊2日で、教習所を貸し切って行われた。参加者は助手席に座るインストラクターの指示に従いながら車を操作する。ハンドルをアナログ時計の文字盤に見立て、「右3」と言われれば右に90度、「左6」なら左に180度回す。アクセルとブレーキで速度を調整し、バックでの車庫入れにも挑戦した。
参加者の声
鳥取県から参加した村田静也さん(68)は16歳で全盲になったが、幼い頃から車好きで、現在も知人の運転でドライブを楽しむほどだ。「自分の意思で車が動く一体感は格別」と笑顔を見せた。
東京都の北村直也さん(32)は生まれつき目が不自由だが、「参加前は難しいかもと不安もあったが、ハンドル操作はとても楽しかった。子どもの頃から車に乗せてもらい、運転は大人がするものだと思っていた。人間が出せない速度に憧れもあった」と語った。
盲導犬とともに都内から参加した鶴東陽香さん(35)はマッサージの仕事をしている。「お客さんが運転で疲れると言うので、その感覚を知りたくて参加した。同じ姿勢で右足の操作が多いことに納得した。運転自体は新鮮な体験だった」と振り返った。
ツアー実現の背景
こうした運転体験は約10年前から大手旅行会社の企画で定期的に行われており、県内ではモビリティーリゾートもてぎ(茂木町)の駐車場などが会場となっていた。今回のツアーは、より日常的な操作を体験する機会を作ろうと、日本介護システム(大阪市)が企画。自動車研究開発のオートテクニックジャパン(ATJ、芳賀町)が、県立盲学校の交通安全教室に取り組む県中部自動車学校に協力を求め、実現した。
今後の展望
これまでは初級編として実施され、6月には経験者を対象とした中級編が計画されている。路上にわずかな段差を設け、乗り上げたらハンドルを一定量切って曲がる仕組みを作り、より自発的に運転を楽しめるようにするという。
不可能と思われることでも工夫すれば実現できることを示し、挑戦する意欲を高めるのもツアーの目的だ。ATJの担当者は「参加者は音や振動に敏感で、操作を覚えるのは一般の人より速いと感じる」と話す。新たな視点から交通安全を考える機会とするのも、重要な目的の一つだという。



