日産自動車の苦境の根本には、身の丈に合わない経営目標を掲げ、値引きに依存してきた悪弊がある――。元日産社員で、ブルームバーグ・インテリジェンスの自動車アナリスト、吉田達生さん(66)はそう指摘する。長期ビジョンを打ち出し、再出発を図る古巣をどうみるか。
長期ビジョンの評価
日産が4月14日に発表した長期ビジョンについて、吉田氏は「ひとまず競争の武器を整え、スタートラインに立つ準備をしたという印象です」と評価する。日産の苦戦の一因は新興国などに手を広げすぎたことであり、今回は優先順位を付けて日本、米国、中国をリード市場にすると明確にした点を評価する。
2030年度までの販売台数目標については、日本で年55万台(25年度は39万8千台)、米国で年100万台(同90万6千台)と、これまでの高すぎる数字を出す癖が少し改善していると指摘。「商品がそろえば達成できないレベルではありません」と述べる。
中国市場の目標には疑問
一方、中国の年100万台(同66万1千台)という目標については「いささか疑問もあります」と述べ、AI推進についてもトヨタやホンダも手がけており、差別化が難しいと指摘。それでも「エグゼキューションリスク(実行に移す段階のリスク)に目をつぶれば、競争していく構えはできました」と総括する。
経営難の背景と悪弊
吉田氏は、日産の経営難の本源的な問題として、身の丈に合わない経営目標を掲げ、値引きに依存してきた悪弊を挙げる。この悪弊が長年続き、収益性を悪化させてきたと分析する。元社員として、古巣の再建には、現実的な目標設定と値引きに頼らない販売戦略が必要だと強調する。
今後の日産の行方について、吉田氏は「スカイラインやGT-Rのような象徴的なモデルの復活も重要だが、まずは基本に立ち返り、収益性を重視した経営が求められる」と語る。



