再審制度見直しで自民・稲田氏が政府を批判
刑事裁判をやり直す再審制度の見直しを巡り、政府と自民党の意見対立が続いている。弁護士でもある自民党の稲田朋美元防衛相(衆院福井1区)は本紙のインタビューで、法務省が示した刑事訴訟法改正案について「冤罪被害者の救済ではなく、検察のための法律を作ろうとしている」と批判した。稲田氏は、再審開始決定に対する検察官の不服申し立て(抗告)を禁止する規定が条文の本則に盛り込まれない限り、反対を続ける考えを示した。
冤罪事件の長期化を問題視
稲田氏は、1966年の静岡県一家強盗殺人事件で死刑判決を受けた袴田巌さんや、86年の福井市女子中学生殺害事件で服役した前川彰司さんの冤罪事件を例に挙げ、「再審で無罪を勝ち取るのに、あまりにも膨大な年月がかかる」と指摘。その要因として、裁判所が再審開始を決めても検察官が抗告することで公判開始が遅れることを挙げた。また、証拠開示に関する明文規定がなく、裁判所の裁量に委ねられている点についても、「証拠をもっと早く、広く出すようにしなければいけない」と問題意識を示した。
法務省の姿勢に反発
法務省が示した当初案は、法制審議会が2月にまとめた要綱を踏まえ、抗告を維持。新設する証拠開示の規定も、再審請求に関係する範囲に制限する内容だった。稲田氏は、異論を聞かない法務省の姿勢にしびれを切らし、今月6日の党会合で「私たちの言うことは1ミリも聞かない」と訴えた。抗議の姿に注目が集まり、世論も「これはおかしい」となったと振り返る。反対論の高まりを受け、法務省は一部修正に応じたが、抗告を「十分な理由があると認める場合」に限る規定などを付則に明記するにとどまった。稲田氏は「本則の抗告規定に手を付けないのは、自分たちの権限には指一本触れさせないという意思の表れだ」と断じた。
政府の成立目指す中、溝埋まらず
法務省は来月7日の自民会合で再修正案の提示を検討している。政府は今国会中の成立を目指すが、稲田氏は「冤罪の死刑囚を精神が病むまで救済できない今の制度は正義に反する。検察の言いなりで法案を了承するなら、政治はいらない」と強調した。
検察側の立場と与党内の葛藤
法務省が刑事訴訟法改正案を2度修正する事態となった再審制度見直し議論。法務・検察内では、再審開始決定に対する検察官の不服申し立て(抗告)の維持は譲れない一線だった。昨年3月に法制審に諮問された際、超党派の国会議員連盟は不服申し立て禁止を盛り込んだ法改正案を検討していたが、ある検察幹部は「禁止は論外」と話していた。法制審部会では、日弁連の委員らが禁止を求めたが、法学者や検察官の委員らが反対。三審制の下で確定した有罪判決が一度の開始決定で覆されると法的安定性が損なわれるとの意見が多数を占め、維持された。
自民側の反発について、ある検察幹部は「司法制度は理性的に議論するべきなのに、感情論になっている」と話す。難航する議論を受け、一部の検察幹部からは「全面禁止もやむを得ない」との声も上がるが、「誤った再審開始決定を是正する機会は不可欠だ」と維持を主張する声が強い。結論が見えない中、法務省の改正案を擁護する立場の自民議員からも「法務省は法制審でもっと考えるべきだった。この状態で高市首相を答弁に立たせるわけにはいかない」と苦言が漏れる。



