コロナ対策融資を悪用か 破綻会社が公的資金1億5000万円を不正受給の疑い
熊本県宇城市の野菜委託販売会社を巡る事件で、同社代表の容疑者(52歳)が事実上経営破綻した後も出資を呼びかけていた実態が、被害者の証言や福岡県警の捜査から明らかになってきた。さらに、同社のグループ会社が政府系金融機関に決算を粉飾した書面を提出し、1億5000万円の融資を受けた疑いも判明。新型コロナウイルス対策の公的資金が悪用された可能性が高まっている。
破綻後も続いた出資勧誘 被害者は「堂々として信じてしまった」
「あの時、もう破綻していたとは……」。野菜委託販売会社に3000万円を出資した福岡市の50歳代男性は憤りの表情を浮かべる。2022年12月、福岡市のビルの一室で行われた説明会では、容疑者が約20人の参加者を前に「キャベツは夏は不良だったが、冬は上がっている」と力説していた。
同社は契約農家からキャベツなどを大量購入し、外食チェーンなどに売却して利益分を還元する事業を説明。容疑者は「腹いっぱい仕事をさせてほしい」と熱心に出資を呼びかけたという。
しかし、県警の財務捜査結果や、容疑者が2022年5月末の役員会議で「配当を止めたい。会社が破綻する」と発言していた事実から、同社は同年6月頃には既に経営破綻していたとみられている。配当は500万円で止まり、元本も戻っていないという男性は「堂々としており、信じてしまった」と肩を落とした。
決算粉飾で融資受給 公的資金1億5000万円の行方
事件の核心は、同社のグループ会社が政府系金融機関に対して行った融資申請にある。同社は実際には利益が出ていないにもかかわらず、決算書類を粉飾して提出。その結果、1億5000万円の融資を受けた疑いが強まっている。
この融資は新型コロナウイルス対策として設けられた公的資金制度を利用したものとみられ、本来は経営難に陥った企業を支援する目的で創設された制度が悪用された可能性が浮上している。
山奥の住宅と倉庫 近隣住民が語る容疑者の実態
今月3日、記者は宇城市の容疑者宅を訪れた。2階建ての住宅は山奥に位置し、同社の所在地と同じ敷地内にある。そばには鉄骨平屋の倉庫(床面積800平方メートル)が建てられていた。
近くに住む50歳代男性は「トラックが頻繁に出入りしたり、倉庫で大量のキャベツが腐って悪臭を放ったりしたこともあった」と証言。80歳代女性は「色々な事業に手を出していた印象がある」と容疑者の活動について語った。
福岡県警は現在、詐欺罪や有価証券報告書虚偽記載罪などの容疑で捜査を進めており、公的資金の流用経路や出資金の使途について詳細な解明を急いでいる。この事件は、コロナ禍における公的支援制度の監視体制の甘さを露呈するケースとして注目を集めそうだ。



