福島医科大学医学部放射線健康管理学講座などの研究グループは、災害後の中長期的な健康悪化を「災害関連後遺症」と定義付けた分析・提言を国際学術誌に発表した。震災と原発事故後15年の知見から、避難などに起因する健康影響の位置付けを明確にすることで中長期の支援体制を強化する狙いがある。後遺症の医学的な認定基準などの制度構築に向け、全国の地震被災地の医師らによる共同研究体の設立を視野に入れている。
同講座の二上純奈さん(医学部2年)を筆頭著者とする研究グループは、震災後の福島、宮城両県での脳卒中入院患者の増加や認知機能低下、うつ病発症などの知見を基に、避難生活による持病の悪化や通院が途絶え脳卒中を発症したケース、住環境の変化に伴う認知機能の低下、孤立によるうつ病の発症など災害によって引き起こされた健康被害を「災害関連後遺症」と提唱。認定・評価基準の整備や支援体制強化の必要性を指摘した。二上さんは「災害関連後遺症と呼ばれる人の存在を周知し、焦点を当てることで最終的にそういう症状の人を減らせるようにしたい」としている。
責任著者の坪倉正治同講座主任教授は震災と原発事故後の「災害関連死」の研究を続けている。2015年から開いている弁護士と医師との勉強会で「死亡には至っていないが中長期に健康影響を受けている人たちの存在を世間が知り、フォローアップする枠組みが必要だ」との意見が浮上。坪倉氏は「住民の帰還が進む中、帰還者に対する対策が中心という構造に変わってきている部分がある一方、後遺症を抱える人たちは戻りたくても戻れない状況の場合もある」と指摘する。
坪倉氏らは地震被災地にある各大学の研究チームとともに、医学系の共同研究体設立に向け調整を進めており「医学的にどういうものが災害関連後遺症と認められるべきかをまとめる形を目指したい」としている。



