住宅街に「終活カフェ」が登場、葬儀社が運営する理由と利用者の本音
住宅街に「終活カフェ」が登場、葬儀社が運営する理由

人生の終わり方を考えたり、最期の迎え方を準備したりする「終活」を身近に感じてもらうためのカフェが、東京都足立区で毎週水曜日に開かれている。地元の葬儀会社が運営するこの場所は、どのような空間なのか。4月下旬に訪れ、関係者の思いを聞いた。

運営側「気軽に話せる場をつくりたかった」

「終活カフェ こうこう庵」と書かれた緑色ののれんが、足立区役所から徒歩10分ほどの住宅街の一角に掲げられている。店内にはコーヒーやカフェラテ、抹茶ラテなど14種類のドリンクが用意され、フリーWi-Fiも完備。見た目は普通のカフェと変わらない。

しかし、壁の棚には葬式や遺品整理、介護などの項目ごとにまとめられたファイルや、墓のパンフレットが置かれている。1冊のファイルを開くと、葬儀の流れやプラン内容、費用が紹介されていた。「いきなり終活の話はしづらい。気軽に話せる場をつくりたかった」と、カフェを運営する葬儀会社「孝行舎」の田中孝平社長(47)は語る。

Pickt横長バナー — Telegram用の共同買い物リストアプリ

2023年12月、区の補助金を活用し、事務所兼倉庫を改装して開店。接客は孝行舎の職員が担当し、葬儀などについての質問があれば応じる。スタッフの佐藤直美さん(38)は「ふらっと立ち寄り、『親が危ないんだけど、葬儀の金額はどれくらい』『自分はもう身内がいなくて、墓じまいってどうすればいい』と聞く方もいた」と振り返る。

一般客はドリンク1杯300円で、ケアマネジャーや看護師などの専門職には100円で提供。ただし、相談をした場合、ドリンクも相談料も無料となる。会社のPRになるほか、田中社長は「休憩などで使ってもらえれば、地域住民が様々な悩みを相談できる場所になる」と狙いを語る。

利用者「事前に聞けて心理的ハードルが低い」

利用者で訪問マッサージ師の吉野勝真さん(47)は「親や自分自身のことも含め、いざという場面にならないと知り得ない情報を事前に入手できるのはありがたい。聞く心理的ハードルが低い」と歓迎する。

店舗営業は毎週水曜日の午前10時から午後4時までだが、さらにキッチンカーを使って東京23区を中心に老人ホームや霊園にも月4回ほど出向く。田中社長は「死を忌み嫌う意識は根強いが、人は生まれたからには亡くなる。残された家族の安心にもつながり、終活は決して悪いことではない」と訴える。

医療介護情報サービス会社「エス・エム・エス」が昨年10月に60歳以上の親を持つ男女1033人に実施したアンケートでは、親と終活について「話したことはない」とする回答が64.5%に上る。

志学館大の吉川直人講師(社会福祉学)は「核家族化や地域関係の希薄化に伴い、死や終活について自然に周囲と話したり、情報を得たりする機会が減っている」と前置きした上で、「そんな社会の空白を埋めるための『入り口』として、終活カフェには必要性と社会的意義が生まれている。今後、じわじわと広がるのではないか」と語る。

Pickt記事後バナー — 家族イラスト付きの共同買い物リストアプリ