高市首相の訪米控え日米投資協議 5500億ドル具体化へ閣僚級協議進む
高市首相訪米控え日米投資協議 5500億ドル具体化へ

日米投資5500億ドル具体化へ閣僚級協議 高市首相訪米控え具体案詰める

赤沢亮正経済産業大臣は12日(日本時間13日)、ワシントンの日本大使館で記者団に対し、「高市総理とトランプ大統領の強い絆のもと、総理の米国訪問を実り多いものにするという観点も念頭に交渉している」と述べた。これは、日米関税合意で日本が約束した5500億ドル(約84兆円)の対米投資の具体化に関する協議を指している。

第1号案件候補に人工ダイヤモンド・火力発電・港湾整備

この日、赤沢大臣はラトニック米商務長官と最初の投資先決定に向けた詰めの協議を約1時間半にわたり実施した。関係者によれば、第1号案件として人工ダイヤモンドの製造施設、火力発電所の建設、原油輸出の港湾整備の三つが候補に挙がっている。ある経済官庁幹部は「米側は協議がまとまりしだい、早く発表しようと言っている」と明かす。

しかし、日本側としては3月19日に予定される日米首脳会談の「お土産」として華々しく発表したい意向があり、合意には至らなかった。赤沢大臣は「引き続き精力的な調整を進めていく」と語り、交渉継続の姿勢を示した。

衆院選直後の訪米に外交加速の意図

赤沢大臣が衆院選の投開票日から間を置かずに訪米した背景には、昨秋から事務レベルで積み上げてきた投資先協議を閣僚級で一気に前進させる狙いがあった。赤沢大臣は首相の「世界の真ん中で咲き誇る日本外交」という言葉を引用し、各閣僚がそれを「体現しなければいけない」と強調した。

今回の訪米では、首相から指示された農産物の輸出拡大や重要鉱物の供給多角化などの課題についても米側と協議するという。衆院選で圧勝し国内で圧倒的な力を手に入れた高市早苗首相の手腕が外交でも発揮できるかが注目される。

日米首脳会談控え防衛費増額など課題山積

高市政権は3月の日米首脳会談開催に向け本格的に動き出したが、「安定した政治基盤」を獲得したとはいえ、対米・対中では難局が待ち構える。トランプ政権は「新たな世界基準」として同盟国に国内総生産(GDP)比5%の防衛費支出を求める「国家防衛戦略(NDS)」を掲げており、日本側への圧力が強まることが予想される。

首相はGDP比「2%超」の防衛費増額を視野に安保関連3文書の年内改定を示しているが、これは西半球の権益確保に集中する「ドンロー主義」を打ち出したトランプ政権の方向性に沿うものだ。急速に軍事力を増強する中国を抑止するため、米側は日本がより大きな役割を果たすことを期待している。

トランプ大統領の「全面支持」も交渉材料の可能性

昨年10月の訪日で首相と初会談したトランプ大統領は、衆院選中に異例の「全面的支持」をSNSで表明するなど良好な関係をアピールしている。しかし、この「支持」表明は今後の交渉を見据えて計算ずくで行っているとの見方もあり、日本政府内では「防衛費などやるべきことをやってくれ、と強く言ってくるだろう」との警戒感もある。

3月19日の日米首脳会談は、トランプ大統領が4月に訪中を予定し習近平国家主席との会談が控える中で行われる。自身の台湾有事答弁で対中関係が冷え込む首相側と、ディールを目指して関係安定化を図るトランプ大統領の間では、対中認識をめぐる温度差も目立つ。

中間選挙控え米側の要求強まる可能性

米側は5500億ドルの対米投資の具体的進展に加え、防衛費増額を提起する可能性がある。トランプ大統領は今秋の中間選挙を控え、アピール材料となる成果を日本から引き出す思惑もあるとみられる。米戦略国際問題研究所(CSIS)のクリスティ・ゴベラ日本部長は「防衛面で、米国は日本の負担分担についてより踏み込むことが予想される」と指摘する。

さらに、首相が示す積極財政姿勢などを背景に日本の長期金利が上昇しており、米国の長期金利上昇を招いているとの懸念から、日本側が配慮を迫られる可能性もある。

国際情勢の変化と日本外交の課題

欧州やカナダの首脳は、デンマーク自治領グリーンランドの割譲まで求めた米国に不信を募らせる一方、相次いで訪中し中国との関係改善に乗り出している。カナダのカーニー首相は1月のダボス会議で「世界秩序の断絶」にあるとし、外交上の不確実性のリスクを分散し多角化を図ると訴えた。

日本政府は日米同盟の強化とともに、欧州や豪州、東南アジア諸国連合(ASEAN)などの同志国との連携を進める姿勢を示すが、欧州側のような強い危機感をもっているとは言えない情勢だ。高市政権の外交戦略が国際的な地政学の変化にどう対応するかが問われる。