インタビュー米国に迫る債務危機「もはや安全ではない」 数年以内に起き得る
2026年6月4日 18時00分 有料記事 聞き手・笠井哲也
日本で、米国で、政府の借金が膨らんでいる。危機など起こらない、きっと大丈夫。そんな楽観論もなくはない。だが、米国を代表する経済学者の一人で、昨年「ドル覇権が終わるとき」を著して警鐘を鳴らした債務問題の専門家、ケネス・ロゴフさんは言う。金利が上昇に転じた今、米国に債務危機が迫っている――と。世界で最も裕福な米国で一体、何が起き得るのだろう。
ハーバード大学のケネス・ロゴフ教授=2026年5月28日、米ニューヨーク、笠井哲也撮影
「米国政府の債務は40兆ドル近くに」
――米国政府が抱える債務は計40兆ドル(約6400兆円)近くに膨らみ、国内総生産(GDP)の120%を超えます。これを問題視していますね。
「断っておきますが、私は『Our Dollar, Your Problem(邦題:ドル覇権が終わるとき)』を書くまで、米国に債務危機が訪れるとは考えていませんでした。極めて大きな債務を抱える国は、金融危機やパンデミックなどに財政刺激策を使って対応することに消極的になるため、経済成長が鈍化する傾向にあるとは論じてきましたが」
「しかし、本を執筆するなかで、米国に何らかの債務危機が起こることが避けられないという見解に至りました。なぜなら、米国の政治システムが債務の増加に対応できないからです。経済の問題ではありません」
政治システムの機能不全が危機を招く
――どういうことでしょう。
「米国は世界最大の債務国で、その債務は増え続けています。政治的分断が深刻化し、歳出削減や増税などの必要な措置を講じることができません。両党が妥協を拒むため、債務上限の引き上げが繰り返され、財政規律が失われています。このままでは、数年以内に債務危機が現実のものとなるでしょう」
――具体的にどのような危機が想定されますか。
「最悪の場合、米国債の利回りが急騰し、ドルの信認が失われる可能性があります。米国債はこれまで『安全資産』と見なされてきましたが、もはや安全ではないと言わざるを得ません。金利上昇が続けば、債務返済コストが膨らみ、財政はさらに悪化します。この悪循環を断ち切るには、政治的な決断が必要です」
――日本への影響は。
「日本も巨額の債務を抱えており、米国の危機は直接的な影響を及ぼすでしょう。特に、日本は米国債の最大の保有国の一つです。米国債の価値が下落すれば、日本の保有資産も目減りします。また、世界経済の混乱は輸出にも打撃を与えます」
――読者へのメッセージを。
「楽観は禁物です。米国の債務問題は、決して他人事ではありません。私たちは、政治が機能しなければ経済も機能しないという現実を直視すべきです。今こそ、持続可能な財政政策への転換が求められています」
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