スマホをかざすだけで瞬時に計測 丸紅が畜産業向け画期的アプリを開発
総合商社の丸紅が、スマートフォンアプリを使用して牛の体重をわずか0.2秒で測定できる技術の開発に取り組んでいる。この画期的なアプリは、従来は多大な労力を要していた畜産業の作業を大幅に簡素化する可能性を秘めている。
従来の測定方法は大人4人がかりの重労働
従来の牛の体重測定は、極めて手間のかかる作業だった。例えば、島根県益田市の松永牧場では2026年1月下旬、出荷時の測定のために大人4人がかりで作業を行った。牛をトラックから1頭ずつ降ろし、前後が開いた箱型の測定機に乗せるため、身体につないだ綱を引っ張ったり後ろから押したりする力仕事を必要とした。
松永牧場の松永拓磨取締役によれば、牛の体重測定は生育具合の把握や飼料計画の参考になる重要な作業である。しかし、その手間と労力の大きさから、日常的な測定は現実的に困難だった。測定は出荷時だけでなく、子牛を母牛から離す時や、生後270~300日頃に行う角切りの時など、牛を移動させる機会を利用して効率的に行われることが一般的だった。
総合商社が畜産業に参入する背景
数百億単位の大型プロジェクトを手掛けることで知られる総合商社が、なぜ「牛の体重測定」という分野に着目したのか。その背景には、畜産業の持続可能な発展への貢献と、新たなビジネスチャンスの開拓があると考えられる。
丸紅が開発するアプリは、スマートフォンのカメラを牛にかざすだけで、深度センサーや画像解析技術を駆使して体重を瞬時に計測する。この技術が普及すれば、牧場従業員の負担軽減に加え、データの蓄積による飼育管理の高度化も期待できる。
日本の畜産業は、高齢化や人手不足といった課題に直面している。こうした状況下で、デジタル技術を活用した効率化は業界全体の競争力向上に寄与する可能性が高い。丸紅の取り組みは、総合商社の多角的な事業展開の一環として、伝統産業と先端技術の融合を図る試みと言える。
2026年4月の実用化を目指す
現在、開発中のアプリは実証実験を重ねており、2026年4月の実用化を目標としている。松永牧場をはじめとする協力牧場でのテストを通じて、精度の向上とユーザビリティの改善が進められている。
この技術が確立されれば、牛の健康管理や出荷時期の最適化など、畜産業の生産性向上に直結するメリットが生まれる。さらに、測定データをクラウドで管理することで、複数の牧場間での比較分析や、飼育方法の改善にも活用できるようになる見込みだ。
丸紅の担当者は、「総合商社としての強みを活かし、グローバルな視点で日本の一次産業を支援したい」と意欲を語っている。今後は、国内だけでなく海外の畜産市場への展開も視野に入れているという。
伝統的な手法が根強く残る畜産業界において、デジタル革新がもたらす変化は計り知れない。丸紅の挑戦は、業界の常識を覆すとともに、農業とテクノロジーの新たな関係性を築く契機となるかもしれない。



