高松塚古墳「飛鳥美人」の上着に東南アジア原産の臙脂使用か 国際交流示す発見
飛鳥美人の上着に臙脂使用か 国際交流示す発見

高松塚古墳「飛鳥美人」の上着に東南アジア原産の臙脂使用か 国際交流示す発見

奈良県明日香村にある高松塚古墳(特別史跡、7世紀末~8世紀初め)の極彩色壁画(国宝)で、「飛鳥美人」として知られる女性群像の一人の上着に、東南アジアなどが原産の濃い赤色の色料「臙脂(えんじ)」が使われた可能性が高いことが明らかになった。文化庁の検討会で2026年2月25日に報告されたこの発見は、当時の国際交流を物語る貴重な証拠として注目を集めている。

最先端の非破壊分析で判明した臙脂の使用

壁画の保存・管理を担当する東京文化財研究所(東文研)などが、「飛鳥美人」を構成する4人の女性像のうち、左から2人目の桃色にみえる上着の彩色部分を、最先端の非破壊手法「可視分光分析」で解析した結果、臙脂の使用が判明した。調査を担当した東文研の犬塚将英・保存科学研究センター長によれば、この桃色は臙脂と鉛白を混ぜたか、臙脂の赤色が退色した可能性があるという。

臙脂は、東南アジアや南アジアに分布するラックカイガラムシという昆虫が分泌する樹脂状物質(紫鉱〈しこう〉)から得られる色料で、奈良・正倉院には薬としても伝わっている。これまでにも「飛鳥美人」の壁画からは、右から2人目の女性像のスカート(裳〈も〉)に臙脂が使われた可能性が指摘されており、今回の調査では、同じ女性像の上着にも臙脂を用いた可能性が浮上している。

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国際性と緻密さを物語る最古の事例

古代の材料に詳しい成瀬正和・元宮内庁正倉院事務所保存課長は、この発見について「絵画の色彩に臙脂が利用された最古の事例だろう。唐などを経由して日本まで届けられたとみられ、改めて高松塚壁画の国際性と描き方の緻密さが明らかになった」と評価している。臙脂のような遠方原産の材料が使用されたことは、当時の日本がアジア各地との活発な交流を持っていたことを示唆しており、歴史的な意義が大きい。

高松塚古墳壁画は、1972年に発見されて以来、その鮮やかな色彩と優れた芸術性で知られてきた。今回の分析結果は、壁画の保存状態や制作技術に関する新たな知見を提供するとともに、古代日本の文化や貿易ルートの解明にも役立つと期待されている。

文化庁では、今後も非破壊調査を継続し、壁画の材料や技法についてさらに詳しい分析を行う方針だ。この発見は、日本の文化財研究における重要な一歩となり、国際的な学術的関心を呼び起こす可能性が高い。

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