政府は、生成AI(人工知能)の学習データに関する著作権法の在り方を検討するため、有識者会議を設置する方針を固めた。関係者への取材で明らかになった。今月にも初会合を開き、年内にも中間報告をまとめる見通しだ。
背景と目的
生成AIは、大量のデータを学習して文章や画像などを自動生成する技術で、急速に普及している。しかし、学習データに著作物が含まれる場合、著作権者の権利を侵害する可能性が指摘されている。現行の著作権法は、AIによる学習を「非享受目的」とみなして一定の範囲で認めているが、AI生成物の利用が拡大する中で、制度の見直しが必要との声が上がっている。
政府は、AI産業の競争力強化と文化発展の両立を図るため、有識者会議で具体的な法改正の方向性を議論する。会議では、著作権者の保護とAI開発の促進のバランスをどう取るかが主な焦点となる。
有識者会議の構成
有識者会議は、法律やAI技術の専門家、出版・音楽・映像などの著作権関係者、AI開発企業の代表などで構成される。座長には、著作権法に詳しい大学教授が就任する見込みだ。政府は、会議の議論を基に、次期通常国会への著作権法改正案提出を目指す。
議論のポイント
- 学習データの利用範囲: AIが著作物を学習する際に、著作権者の許諾が必要かどうか。現行法では、研究目的などの場合に限り許諾なしで利用可能だが、商業目的のAI開発にまで拡大すべきか議論される。
- AI生成物の著作権: AIが生成した文章や画像に著作権が発生するかどうか。現行法では、人間の創作性が認められる場合に限り著作権が発生するが、AI単独の生成物については保護の対象外とされている。この点についても、見直しの是非が検討される。
- 権利者の利益保護: AIの学習に著作物が使われることで、権利者の収入が減少する懸念がある。補償金制度の導入や、学習データの透明性を高める仕組みなどが提案されている。
今後のスケジュール
有識者会議は、今月中に第1回会合を開催し、年内に中間報告をまとめる。その後、パブリックコメントを経て、2026年春ごろに最終報告を提出する予定だ。政府は、最終報告を踏まえて著作権法改正案を策定し、2026年の通常国会に提出する方針。
業界の反応
出版業界や音楽業界など著作権者側は、AIによる無断学習の防止を求めており、法改正を歓迎する声が多い。一方、AI開発企業からは、規制強化が技術革新を阻害する可能性を懸念する声も上がっている。政府は、双方の意見を踏まえたバランスの取れた制度設計を目指すとしている。
生成AIをめぐっては、海外でも著作権法の見直しが進んでいる。欧州連合(EU)は昨年、AI規制法を成立させ、学習データの開示義務などを課している。日本政府も、国際的な動向を踏まえつつ、独自の制度を検討していく方針だ。



