越前海岸に新たな息吹 住民「盛り上げ隊」が10年で創出する地域活性化の軌跡
越前海岸の住民「盛り上げ隊」が10年で創出する地域活性化 (13.02.2026)

越前海岸に新たな息吹 住民「盛り上げ隊」が10年で創出する地域活性化の軌跡

過疎化と少子高齢化が深刻化する福井市の越前海岸沿いで、地域住民らが結成した「越前海岸盛り上げ隊」の活動が、10年以上にわたって続けられている。この取り組みは、UターンやIターンで地元に戻った隊員たちが、それぞれの得意分野を生かしながら、体験イベントの実施や宿泊施設の整備、観光マップの作成などに積極的に取り組むことで、新たなにぎわいを生み出している。

地域の課題と危機感から生まれた結集

北は坂井市三国町安島から南は敦賀市杉津まで続く越前海岸は、夏の海水浴や冬のスイセン観賞、越前がにをはじめとする豊富な海の幸で知られる。しかし、近年ではレジャーの多様化に伴い観光客が減少し、高齢化や過疎化も進行していた。こうした状況の中、福井市国見地区出身の長谷川渡さん(49)が、県外での修業を経て2011年に地元でガラス工房を開設。「体験型にして人を呼びこみたい」という思いから、まちづくりに賛同する有志約10人と共に、2015年に「越前海岸盛り上げ隊」を発足させた。

隊員たちは毎月、課題や展望について話し合いを重ね、特に北陸新幹線の県内延伸が迫る中、「開業効果を逃してはだめ」という強い危機感を共有した。これが、積極的な活動の原動力となっている。

情報発信と体験イベントで観光客を呼び込む

まず力を入れたのは情報発信だ。海岸沿いの観光スポットやカフェ、飲食店などを記したガイドマップや専用ウェブサイトを作成し、マップは改良を続けて現在では30以上の施設や観光地が一目でわかるようデザインを工夫した。

さらに、2018年からは夏季限定で、ナイトシュノーケルやタコかご漁、古民家での田舎暮らしなど約40種類の体験イベントを企画。若者を対象にしたこれらの取り組みは、海岸の新規ファン獲得を目指す重要な戦略となっている。

交流拠点の創出と隊員の増加

また、隊員たちはフリースペースの開設や空き家の改修を通じて、人が集まる場所作りも推進。国見地区の海沿いにある「くにみクラゲ公民館」はその代表例で、福井市出身の館長・田中俊之さん(47)がUターンを機に改装し、2022年にオープンさせた。

ここでは約10種類のクラゲに加え、近くの海で採取した80~90種類の魚を展示。生き物とふれあう体験コーナーも設けられ、県内外から多くの子どもたちが訪れ、市内の小学生向け課外学習でも人気を博している。田中さんは「来てくれた人にまずは楽しんでもらい、越前海岸の魅力を知ってもらいたい」と強調する。

隊員は徐々に増え、UターンやIターンを含め現在は40人を超える。様々な肩書を持つ隊員たちが、それぞれの活動を通じて海岸をPRしている。長谷川さんは「個性的な人がいるから面白くなる。隊員が自由にそれぞれの活動でまちづくりに貢献してくれるのが理想」と語り、地域活性化への持続的な取り組みを支えている。