札幌の中国料理店に新たな風、若き料理人が古典の技を継承
札幌の街に、中国料理の新たな物語が幕を開けた。長年愛されてきた「茶月斎」が「茶月斎AKETA」として生まれ変わり、この2月から静かに営業を開始している。27年間にわたり季節の食材の魅力を中国料理で伝えてきた前店主の小蕎隆広氏(57)が、後継者として選んだのは、師弟関係のない明田啓氏(30)だ。店名や空間、志はそのままに、料理と店主が変わるという異色の継承が、料理界で注目を集めている。
留萌市出身の若き料理人、幅広い経験で腕を磨く
明田氏は北海道留萌市の出身。大阪の調理師専門学校で中国料理を専攻した後、さまざまなタイプの中国料理店で経験を積んできた。中でも大きな影響を受けたのが、かつて福岡県にあった四川料理の名店「巴蜀」での修業だ。同店では四川料理の歴史や時代背景まで深く掘り下げ、古いレシピの再現に取り組んでいた。「食文化を大切に、料理と真摯に向き合う意義を学びました」と明田氏は振り返る。この経験が、古典の技を大切にしながらも新たな挑戦を続ける現在の姿勢につながっている。
古典の麻婆豆腐が名刺代わり、シンプルな味付けに驚き
新・茶月斎では、おまかせコースの日をメインに、不定期でアラカルト料理の日も設けている。いずれも四川料理を中心に、さまざまな中国料理の技法で北海道の食材を生かした料理を楽しめる。中でも明田氏の名刺代わりとなる一品が、古典を意識した「麻婆豆腐」だ。
味付けは塩とほんの少しの砂糖だけというシンプルさながら、驚くほどの奥行きの深さを感じさせる。油を多く使っているにもかかわらず、油っぽさはまったくない。辛そうな色合いだが、実際にはピリ辛程度で、四川山椒の香りとしびれが心地よく広がる。
一般的には豆豉醤や甜麺醤、鶏ガラスープを使うことが多い麻婆豆腐だが、明田氏は薬味や油を使うタイミング、加熱の仕方を工夫することで、コクや甘みを加えている。豆腐を入れてからじっくりと煮込むことで、豆腐と豚ミンチ、ソースが見事に一体化。アラカルトでもコースでも必ず提供する逸品となっている。
ペアリングコースも個性的、完全予約制で丁寧な対応
料理に合わせるお酒のペアリングコースも特徴的だ。ワインや紹興酒だけでなく、ウイスキーや日本酒を合わせることもあるという。料理もサービスも明田氏ひとりで行うため、店は完全予約制。店舗に電話はなく、専用のウェブサイトからの予約を受け付けている。
営業時間は、コース営業日が午後6時半から一斉スタート。アラカルト営業日は不定期で、午後6時から11時まで。月曜と火曜が定休日で、その他不定休がある。場所は札幌市中央区南3西8の7大洋ビル地下1階。
価格は、おまかせコースが1万1000円、ペアリングコース(5杯)が6500円。アラカルトの麻婆豆腐は1400円。いずれも税込み価格だ。
札幌の中国料理界に、新たな頁がめくられた。若き料理人の歩みと、古典の技を大切にしながらも新たな挑戦を続ける姿勢に、これからも注目が集まりそうだ。



