福島・浪江町の老舗旅館「松本屋」が営業再開へ 築130年の建物を保存し復興の拠点に
福島第一原発事故の影響で閉業を余儀なくされた浪江町下津島の老舗旅館「松本屋旅館」が、今夏にも営業を再開することが決定しました。築約130年の歴史を持つ建物を解体せずに保存し、地域の復興と活性化を目指す取り組みとして注目を集めています。
解体か保存かの苦悩を経て決断
4代目の家主である今野秀則さん(78歳)は、大玉村に避難生活を送りながらも、自宅兼旅館だった建物を残すことを選択しました。公費解体の申し込み締め切りを前に、子世代への負担を懸念しつつも、「思い出がある家を残せば古里を感じられる」との思いから保存を決断。当初は高齢を理由に再開を諦めていましたが、放射線衛生学者の木村真三・独協医大准教授(58歳)の提案を受け、運営協力の形で再開が実現することになりました。
築130年の建物と歴史的背景
松本屋旅館は2階建ての構造で、はりや床には良質な津島松が使用されています。営林署職員や渓流釣りの客などに利用され、最盛期の1950~60年代には年間約3000人が滞在するほど賑わいました。妻の芳子さん(69歳)が切り盛りを担い、震災の約10年前には家族の住居も兼ねた「新館」を増築するなど、地域に根付いた営みを続けてきました。
再開計画の詳細と地域への期待
再開後は、新館の4部屋を宿泊施設として提供し、インターネットや電話での予約を受け付けます。県の助成金などを活用して洋式トイレへの改修を実施し、快適な環境を整備。また、敷地内の土蔵を活用したランチ提供も計画されており、韓国料理などを中心に飲食店を営む木村さんの知人の協力で運営されます。
今野さんは、本館を津島地区の交流の場としても活用したいと考えており、「原発事故の被害の大きさを今でも感じるが、津島の再生の一歩になれば旅館を残した意味がある」と語っています。現在、津島地区の居住者はわずか19人ですが、旅館の再開が地域の活性化につながることが期待されています。
復興への一歩としての役割
木村准教授は、「私1人で使うにはもったいない。津島のために活用させてほしい」と声を掛け、旅館の運営を担当。今野さんが手伝う形で、地域の文化や歴史を学ぶために訪れる人たちの利用を見込んでいます。この取り組みは、原発事故からの復興を象徴する事例として、福島全体の再生にも貢献することが期待されます。



