スポーツの未来を問う、町田樹氏が薦める5冊
2026年は、ミラノ・コルティナ冬季五輪を皮切りに、WBCやサッカーW杯などメガスポーツイベントが続き、世界中が熱狂に包まれる一年となるだろう。しかし、その裏では、スポーツ界が数多くの課題に直面している。例えば、トランスジェンダー女性選手の参加問題、ドーピングを容認する国際競技会の是非、AI技術によるアスリートの画一化の懸念、気候変動による競技環境の悪化など、議論すべき問題が山積みだ。
なぜスポーツは問題に直面するのか
これらの問題の根源は、スポーツが19世紀の近代に成立した文化であり、当時の価値観を引きずっている点にある。時代の流れに追いつかない側面や、想定外の環境変化が生じる中で、スポーツは時代錯誤の文化になるリスクを抱えている。しかし、スポーツは柔軟に変化し得る概念でもある。中世の狩猟がスポーツとされていたが、現代ではそう見なされない一方、コンピューターゲームやブレイクダンスが新たにスポーツとして認められる例もあり、固定された形はないのだ。
激動の時代におけるスポーツ文化のあり方
このような背景から、元フィギュアスケーターで国学院大准教授の町田樹氏は、スポーツの未来を考える5冊を推薦する。町田氏は、2014年ソチ五輪に出場し、現在は学術的視点からスポーツを分析している。近著『スポーツ・クリティーク』でも、現代スポーツの課題を論じている。
推薦書籍の詳細
町田氏が選んだ5冊は、スポーツの本質や次代のあり方を深く考察する内容だ。
- 『ポスト・スポーツの時代』(山本敦久著):男女二元制や政治とスポーツの関係など、従来のスポーツ観の限界を指摘し、新たなスポーツ文化を問う。
- 『キリギリスの哲学』(バーナード・スーツ著):ゲーム現象の成立条件を探り、スポーツの前提を思索する哲学的アプローチ。
- 『タイミングの社会学――ディテールを書くエスノグラフィー』(石岡丈昇著):抑圧された視点から社会学理論を駆使し、スポーツの課題を浮き彫りにする。
- 『スポーツ人類学――グローバリゼーションと身体』(ニコ・ベズニエ他著):多様な事例を通じて、スポーツをグローバルな視点で再考する。
- 『実力も運のうち――能力主義は正義か?』(マイケル・サンデル著):スポーツの公平性神話を揺るがし、能力主義の是非を問い直す。
これらの書籍は、スポーツが直面する複雑な問題を理解し、柔軟な変化の可能性を探る手がかりとなる。町田氏は、読者にもこの空想書店でスポーツの未来について考えてほしいと促している。なお、丸善丸の内本店(JR東京駅前)の3階では、近日中に町田氏の「空想書店」コーナーが設置される予定だ。