NHK受信料拒否の男性に支払い命令 名古屋地裁が27万円の支払いを命じる
名古屋地裁(笹本哲朗裁判長)は21日、NHKの受信料支払いを拒否していた名古屋市の男性に対し、約10年分の受信料27万円の支払いを命じる判決を言い渡した。この訴訟は、公共放送NHKが受信料の滞納を理由に男性を提訴したもので、地裁判決は放送法に基づく受信契約の義務付けを支持した。
「NHKを見ない権利」主張も退けられる
被告の神戸郁夫さん(71)は、2014年にNHKの報道姿勢や当時の会長発言に不信感を抱き視聴を中止。解約を申し入れたが、テレビを設置していることを理由に認められず、口座引き落としを停止して支払いを拒否してきた。神戸さん側は「NHKを見ない人にも契約を強いるのは憲法違反」と主張したが、判決はこれを退けた。
判決は、2017年の最高裁判決を踏まえ、放送法がテレビ受信設備の設置者に契約を義務付けることを合憲と判断。「受信料は視聴の対価ではなく、NHKの自律的運営確保が目的」と述べ、契約解除にはテレビの撤去が必要だと明言した。また、インターネットやSNSの普及で「知る権利」が変化したとする主張についても、「最高裁判決が妥当でなくなったとは認められない」と退けた。
男性側は控訴の意思を示し制度見直しを訴え
神戸さんは判決後、代理人弁護士と記者会見し、控訴する意思を明確に示した。「NHKを見ない権利」を主張する裁判の経過を署名サイトで発信したところ、9万筆の賛同が集まったとして、「受信料制度が本当に時代に合ったものか考える契機に」と訴えている。
中谷雄二弁護士は「感覚的な判断で時代の変化と向き合っていない」と判決を批判。「公平負担を求めるなら税金のように広く薄く徴収する仕組みでもいいはずだ」と問題提起した。神戸さんも「市民感覚でおかしいと声を上げたが、未払いの人は他にもいる。NHKは取りやすい人から取ろうとしており不公平」と訴える。
受信料を巡る社会的な議論が活発化
受信料問題では、過去にビジネスホテルチェーンがNHKと裁判で争い、2019年に最高裁で敗訴が確定。また、昨年以降は全国の自治体で公用車のカーナビ受信料未払い問題が明らかとなり、岐阜県などが制度見直しの検討を求める動きを見せている。
一方、NHKは判決について「主張が認められたと受け止めている」とコメント。同局によると、2024年度末の受信料支払率は78%(推計値)で、5年前から約3ポイント低下。1年以上の未払いは170万件超に上り、支払い督促など法的手続きの強化方針を示している。
この判決を機に、受信料制度のあり方に関する国民的議論がさらに活発化することが予想される。神戸さんの控訴審では、デジタル時代における公共放送の役割と負担の公平性が改めて問われることになる。



