棺桶体験で「生」を実感 死を前向きに語る「Deathフェス」が東京で開催
棺桶体験で「生」を実感 死を語る「Deathフェス」開催

死を前向きに語り合う「Deathフェス」が東京で開催 入棺体験で「生」の実感

「死」をタブー視せず、前向きに語り合うイベント「Death(デス)フェス」が、東京・渋谷の「渋谷ヒカリエ」で6日間にわたって開催された。今年は「入棺体験」をはじめとする約90の多彩な企画が用意され、参加者が死を模擬体験することで、生の尊さを再確認する機会を提供した。

棺桶の中で想像する自分の葬式

記者が体験した「入棺体験」では、装飾された木製の棺に自ら足を踏み入れ、あおむけに横たわった。棺桶作家の布施美佳子さん(52)から「あなたはもう死んでいます」と告げられ、初めての言葉にたじろぐ。しかし、棺の中に入ると、ふわっとした感覚に包まれる。

布施さんが花々を顔の周りに飾りながら、「育子さんは十分頑張りました」「もっとお話がしたかった」とポジティブな言葉をかける。お葬式でこんな言葉をかけてもらえるだろうかと考えさせられる瞬間だ。花を飾り終えると、そっと棺の扉が閉まり、暗闇に包まれる。

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暗闇の中での瞑想と「生」の実感

暗闇の中では、圧迫感よりも宇宙空間に漂っているような感覚を覚えた。木の匂いが充満し、身体のこわばりがほどけていく。5分間の瞑想タイムでは、日々の思い出が巡り、全てが良い記憶に思える。

時が過ぎ、布施さんが扉を開けて「お帰りなさい」と出迎えてくれた瞬間、「あー、私生きてる」と本気で実感した。布施さんは「自分の人生のハッピーエンドを体験することは、自分の『生』を見つめることにつながる」と語る。

希死念慮を抱えて参加する人もいるが、入棺体験後に「何で死にたかったんだろう」と感じる人が多いという。布施さんは「死を模擬体験することで今のありがたさを感じ、優しくなれる」と強調し、若者の自殺防止に向けた大学との共同研究も視野に入れている。

世界の葬送文化と多死社会の現実

Deathフェスは、共同代表の市川望美さん(53)と小野梨奈さん(48)が「死をもっとカジュアルに語れたら」と、2024年から「よい死の日」と定めた4月14日の前後に開催してきた。

トークセッション「世界の葬送×死」では、米国ニューオーリンズの「ジャズ葬」やネパールの「ガイジャトラ」など、悲しみを祝祭に転換する文化が紹介された。自治医科大の田中大介教授(文化人類学)は「悲しいことを祝祭に転換する文化は世界にある。真逆の感情だが、つながっている」と指摘した。

「社会×死」のトークでは、元埼玉県警検視官の山形真紀さんらが登壇。医師の診療がないまま亡くなった遺体から事件性の有無を判断する検視官の経験を通し、多死社会のリアルを語った。

孤立死問題と尊厳ある社会を目指して

内閣府が公表した2025年の全国統計によると、誰にもみとられることなく死後8日間以上たった「孤立死」は2万2222人に上り、前年から366人増加した。2024年分から公表を始め、いずれも8割近くを男性が占めている。

山形さんは「孤立を防ぐ仕組み作りが本格的に必要」としつつ、「孤立死が悪いのではなく、早めに気付いてもらえなかったことが悲しい。亡くなられる方が尊厳をもって扱われる社会を目指したい」と語った。

共同代表の2人は「Deathフェスは、死を再定義できるまで、せめて10年間は続けたい」と意気込みを語る。死を前向きに語り合う場が、社会の在り方を問い直す契機となっている。

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