市民後見人制度、登録9000人に拡大も活動は2000人 地域の身近な存在として活躍期待
市民後見人登録9000人、活動は2000人 地域で活躍期待

市民後見人制度、登録者9000人に拡大も活動は2000人 地域の身近な存在として期待高まる

認知症や知的障害により判断能力が不十分な人々の財産や権利を守る成年後見制度において、自治体の研修を受けた一般住民が「市民後見人」として活躍しています。同じ地域に暮らす身近な存在として、本人の思いを丁寧にくみ取り、その実現を手助けする役割を担っています。現在、登録者は全国で約9000人に達していますが、実際に活動しているのは約2000人にとどまっています。認知症高齢者の増加が続く中、活動の機会をさらに広げていくことが求められています。

名古屋市の特養で活動する市民後見人の実例

1月下旬、名古屋市の特別養護老人ホーム(特養)では、市民後見人として活動する会社員の小川千鶴さん(59歳)が、ここで暮らす81歳の男性に語りかけていました。「顔色がいいですね。お昼は何を食べたの?」と声をかける小川さん。男性との会話が盛り上がると、2時間近く滞在することもあるといいます。このような日常的な関わりを通じて、本人の希望や状況を細やかに把握し、必要な支援につなげています。

市民後見人は、法律専門家である「専門後見人」とは異なり、地域住民としての視点を活かした支援が特徴です。本人の生活環境や人間関係に配慮しながら、金銭管理や契約手続きだけでなく、社会参加や趣味の活動など、多様なニーズに対応しています。特に高齢者施設や在宅で暮らす認知症の人々にとって、顔見知りの存在が安心感をもたらす効果が指摘されています。

制度の課題と今後の展望

成年後見制度の利用者は年々増加しており、2025年時点で約25万人に上ります。しかし、市民後見人の登録者9000人に対して活動者は2000人と、活用が進んでいない現状があります。背景には以下のような課題が挙げられます:

  • 研修と実践のギャップ:自治体の研修を受けた後、実際の活動に結びつける仕組みが不十分
  • 負担感:ボランティアベースの活動が多く、時間的・精神的な負担が大きい
  • 認知度の低さ:一般市民や関係機関への制度の周知が不足している

これらの課題を解決するため、自治体や社会福祉協議会では、活動支援金の支給や相談窓口の拡充、企業との連携による職員の参加促進など、取り組みを強化しています。また、デジタル技術を活用した遠隔支援の導入も検討されており、活動の効率化と負担軽減が期待されています。

地域社会全体での支え合いへ

市民後見人制度は、単なる法律的手続きを超え、地域コミュニティの絆を深める役割も果たしています。小川さんのように、普段は会社員として働きながら、週末や休日に活動する「兼業型」の市民後見人も増えています。多様な背景を持つ人々が参加することで、支援の質が向上し、本人の個性に合わせた柔軟な対応が可能になっています。

今後、超高齢社会の進展に伴い、認知症高齢者はさらに増加すると予想されます。市民後見人の活動機会を拡大し、地域全体で支え合う体制を構築することが急務です。自治体や民間団体、企業が連携し、持続可能な支援モデルの確立を目指す動きが活発化しています。

市民後見人は、制度の枠組みを超え、人と人とのつながりを大切にした「新しい福祉の形」を体現しています。登録者9000人という数字を着実に活動者へと変換し、より多くの人々が安心して暮らせる社会の実現が期待されています。