たばこ増税の春に考える明治以来の軍事とたばこの歴史
2026年4月1日から、多くのたばこ銘柄が値上げに踏み切った。加熱式たばこの「メビウス」や「エボ」、紙巻きたばこの「マールボロ」などが対象となっている。原材料費や輸送コストの高騰も一因だが、今春の値上げでは加熱式たばこに課される「たばこ税」の増税が大きな要因だ。各たばこ会社は増税を機に値上げするかどうかを判断したが、来春からは紙巻きたばこでも3段階に分けて税額が上昇する予定である。
約15年ぶりの大増税と防衛力強化の関係
この約15年ぶりのたばこ大増税の究極的な狙いは、防衛力の強化にある。岸田文雄政権は4年前、法人税、所得税、たばこ税の増税によって防衛費の財源を確保すると表明した。しかし、与党内では「所得増税反対」の声が根強く、たばこ税と法人税が先行して増税されることになった。政府は防衛費を増額する一方で、国民への負担増を避けるため、たばこ税に依存する構図が浮き彫りとなっている。
明治維新以来のたばこ課税の歴史
東京・墨田区にある「たばこと塩の博物館」の学芸部長、鎮目良文さん(50)によれば、たばこに初めて税が課されたのは1876年、明治維新後まもない時期だ。今年はその節目から150年を迎える。徳川幕府の年貢が「物納」中心だったのに対し、明治政府は「金納」制度を採用した。しかし、地租を中心とした税制には各地で反対一揆が発生し、政府は財政難に陥った。
鎮目さんは「金欠状態に陥った政府が地租を下げる代わりに目を付けたのがたばこでした」と説明する。政府はたばこ製品に印紙を貼らせる印紙税制度を導入したが、売り手と買い手が結託して印紙を省く密売が横行。政府は脱税を防ぐため、量り売りを禁止し、製品を密封させる措置を取った。
戦争とたばこ専売制の導入
日清戦争で戦費が膨らむと、政府は税制に代えて専売制を導入し、葉タバコの売買を国が独占した。さらに日露戦争期の1904年には、商品の製造販売まで範囲を広げた。明治中期には、米国産葉タバコを原料とした紙巻きたばこ「ヒーロー」などが登場し、たばこ産業は国家の重要な収入源となっていった。
第二次世界大戦中は軍事支出が膨張し、たばこは戦費調達の手段としてさらに活用された。このように、たばこと軍事費の関係は明治以来、日本の歴史に深く刻まれてきたのである。
現代のたばこ増税と今後の展望
今回のたばこ増税は、防衛力強化を目的とした財源確保の一環だが、喫煙者への負担増や健康問題との兼ね合いも課題となっている。政府与党内では所得増税への反発が強いため、たばこ税への依存が続く可能性が高い。鎮目さんは「たばこは常に国家財政の支えとなってきたが、その背景には戦争や防衛という重い歴史がある」と指摘する。
たばこ増税の春、私たちは明治以来の軍事とたばこの悲しき歴史を振り返りながら、現代の政策選択について考える時が来ている。防衛費の財源としてたばこ税が果たす役割は、今後も議論を呼びそうだ。



