エア・ウォーター、大規模な会計不正を公表 営業利益212億円を水増し
産業ガス大手のエア・ウォーターは4月3日、不適切な会計処理に関する特別調査委員会の最終報告書を公表しました。報告書によると、2019年度以降の6年間にわたり、グループ37社で様々な手口による不正が行われ、売上高で669億円、本業のもうけを示す営業利益ベースで212億円が水増しされていたことが明らかになりました。この水増し額は、2月に公表された中間報告書から、売上高で2億円、営業利益ベースで3億円増加しています。
多岐にわたる不正手口と調査妨害行為
不正の手口は、在庫の過大計上や評価損の先送り、売上高の過大・先行計上など、多岐にわたっていました。さらに、調査の過程では、エア・ウォーターによる書類の偽造やデータの改ざんといった妨害行為も発覚しました。松林良祐社長は記者会見で、妨害行為に関与した社員が3人いたことを明らかにし、「従業員の教育ができていなかった。大変責任を感じている」と釈明しました。
前会長の過度なプレッシャーが不正の背景に
特別調査委員会は、不正の背景として、豊田喜久夫・前会長兼最高経営責任者(77)による成長至上主義と過度なプレッシャーを指摘しました。報告書によると、豊田氏は特に「売上高1兆円」の目標に固執し、2023年3月期の会議で目標達成が困難と示されると、役員らを叱責するなど、強い圧力をかけていました。ある取締役は調査委のヒアリングで、「『お前はクビや』『今まで払った給料返せ』と言われ、ひどく追い込まれた」と語っています。
豊田氏は2019年に会長に就任後、役員の人事権を一手に握り、役員らは不利な処遇を危惧して、豊田氏の意向を忖度して不適切な会計処理に関与したり、黙認したりしたと報告書は分析しています。豊田氏は問題発覚後の2025年12月に会長を辞任し、2026年3月末に相談役も退きましたが、公の場での説明は一度も行っていません。松林社長はこの点について、「辞任したことで責任を取ったという理解だ」と述べ、現時点で訴訟などの手段で責任を問うことはないと説明しました。
管理体制の不備と再発防止策
報告書は、継続的なM&A(企業の合併・買収)に伴う規模の拡大に、管理体制の整備が追いついていないことも不正の要因になったと指摘しました。これを受けて、エア・ウォーターはコンプライアンス(法令順守)を最重視する企業風土への変革を掲げ、以下の再発防止策を公表しました。
- 内部監査室の人員を直近の3倍超の50人体制に強化
- 取締役会議長を社外取締役に変更
- 松林社長は月額報酬の100%、ほかの取締役と常勤監査役は50%、社外取締役と社外監査役は20%をそれぞれ4月から3か月間、自主返上
大阪市内で行われた記者会見で、松林社長は自身の関与について「不適切な会計処理を指示したことはない」と説明し、「成長のスピードを落としてでも、正しくやれる体制を構築する。抜本的な改革で再生したい」と強調しました。この不正問題は、企業統治の重要性を改めて浮き彫りにする事例となりました。



