脳を持たないクラゲも眠る? 睡眠研究が明かす生物の深遠な謎
知性の起源は、私たちが考えるよりもはるかに古い時代に遡ります。人間とは進化的に遠く離れ、脳すら持たないクラゲでさえ、環境の変化を敏感に感知し、体全体が一つのユニットのように統合された動きを見せます。しかし、睡眠研究の歴史を詳細に紐解く本書は、知性だけでなく、眠りという現象までもが、脳のないクラゲに存在すると主張しています。脳波を測定できない動物において、どのようにして睡眠を見出したのでしょうか。
行動の違いから定義される睡眠
クラゲは、単なる休息時には外部からの刺激に対して即座に反応を示しますが、睡眠状態に入ると、その反応が明らかに遅れることが観察されています。このように、睡眠は行動の差異によって定義されることが多く、そのアプローチにより、多様な動物種で研究が進められてきました。さらに、分子生物学の目覚ましい発展に伴い、種を超えて共通する睡眠制御遺伝子も次々と発見されています。これらの発見は、睡眠が単に脳を休めるためのものではなく、より根源的な生物学的機能を持つ可能性を示唆しています。
レム睡眠とノンレム睡眠の機能の違い
最近の研究では、高い知性を持つタコに、人間と同様の浅いレム睡眠が存在する可能性が指摘されました。レム睡眠は感情システムと深く結びついており、ノンレム睡眠とは異なる役割を果たしていると考えられています。このことから、私たちの心には、形態が全く異なる遠い動物たちと共有する、複数の無意識のモードが存在するのかもしれません。知性は、目覚めている時間だけに限定されるのではなく、眠りの中からも花開く可能性を想像させ、夢に溢れた一冊となっています。
本書は、脳科学者である恩蔵絢子氏によって評されており、価格は1980円です。恩蔵氏は1979年生まれで、東京大学大学院総合文化研究科の特任研究員を務め、脳科学者の茂木健一郎氏に師事しました。認知症の母親との日常生活を記した著書など、幅広い活動で知られています。この書評を通じて、睡眠の謎が生物全体に広がる深遠なテーマであることを再認識させられます。



