ダンゴムシ、食べた石の鉱物を体内で再構築 殻を強化する驚きの仕組み
ダンゴムシ、食べた石の鉱物を体内で再構築

触ると丸まり、お団子のように転がるダンゴムシ。落ち葉の下やコンクリートの隙間など、街中でもよく見つかる。動きが遅く、かみついたりしないので、捕まえるのもたやすい。子どもたちに人気なのもうなずける。

ダンゴムシの基礎知識

名前に「ムシ」が入るが、昆虫ではなく、エビやカニと同じ甲殻類だ。私たちが目にするダンゴムシの多くは外来種の「オカダンゴムシ」で、明治時代に欧州からやってきたとされる。その背中の殻(外骨格)は鉱物の炭酸カルシウムでできており、外敵から身を守る役割がある。飼育する際に石を虫かごに入れておくと、殻が丈夫になるといわれている。

研究の内容

筑波大の興野純准教授(鉱物学)と同大大学院博士前期課程2年次の竜波駿平さんらは、ダンゴムシが、食べた石に含まれる鉱物をそのまま殻に使うのではなく、体の中で鉱物の構造を作り替えて利用していることを発見した。興野さんは「鉱物をそのまま使っていると予想していた。生き物はすごいと思った」と驚きを隠さない。

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鉱物の多形とは

鉱物には、組成が同じでも結晶構造が異なるものが存在する。これを多形と呼ぶ。例えば、ダイヤモンドと鉛筆の芯に使われる黒鉛はいずれも炭素の結晶で、多形の関係にある。炭酸カルシウムの場合、代表的な多形がカルサイトとアラゴナイトで、カルサイトはひし形、アラゴナイトは柱状の結晶になることが多い。

実験方法と結果

研究を始めた当時、竜波さんは現役の筑波大野球部員。キャンパスの野球場周辺でオカダンゴムシを採集した。そして、飼育器の中にカルサイトだけを入れたグループ、アラゴナイトだけを入れたグループ、石英(炭酸カルシウムではなく二酸化ケイ素)だけを入れたグループの三つに分けて60日間飼育し、外骨格の形成具合を調べた。

その結果、カルサイトとアラゴナイトを食べさせたダンゴムシは、外骨格の鉱物化が進み、分厚く発達した層状構造ができた。一方、石英を食べさせたダンゴムシは外骨格の鉱物化が進まず、薄い構造しかできなかった。さらに詳しく調べたところ、どの炭酸カルシウムを食べさせたかにかかわらず、ダンゴムシの外骨格はカルサイトになっていた。また、その内側には柔らかくて結晶構造を持たない炭酸カルシウム(ACC)の層ができていた。

メカニズムの解明

つまりダンゴムシは、食べた炭酸カルシウムを体内で一度ばらばらにし、カルサイト型に作り替えて利用しているのだ。興野さんは「貝殻や造礁サンゴの骨格も炭酸カルシウムでできているが、実験に使うには、管理が大変で餌の与え方も難しい。ダンゴムシを研究対象にしたことが、今回の成果につながった」と振り返る。

産業応用の可能性

生物が体内で鉱物をつくる現象を生体鉱物化(バイオミネラリゼーション)という。カルサイトやアラゴナイト型の炭酸カルシウムを、ダンゴムシを飼育したのと同様の室温や気圧の環境で人工的に作り出すことは難しい。今回のメカニズムが詳しく分かれば、さまざまな産業応用も可能になる。例えば興野さんは、ひび割れても自然に修復される塗料などへの応用ができないかと考えている。ダンゴムシの外骨格の内側にできるACCは、湿った空気に触れると急速にカルサイトに変化し、硬くなるからだ。

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地球温暖化対策への貢献

筆者は、大気中の二酸化炭素(CO2)を取り込んで炭酸カルシウム化し、地中貯蔵するなど、地球温暖化対策に貢献できるのではないかとひそかに思っている。興野さんは「地球科学の目指すところは、自然の仕組みを理解し、持続可能な発展ができる社会の実現に貢献すること」だという。ダンゴムシの研究は、まさにその一環ではないだろうか。