糸谷哲郎八段が12年の歩みを経て九段に昇段、名人戦挑戦中に節目の勝利
2026年4月16日、将棋界に新たな九段が誕生した。糸谷哲郎八段(37)がこの日、東京都渋谷区の将棋会館で行われた第39期竜王戦3組ランキング戦(読売新聞社主催)で鈴木大介九段(51)に勝利し、八段昇段後の公式戦250勝という規定を満たして最高段位の九段への昇段を果たしたのである。
報道陣の前で「九段ポーズ」を披露し笑顔を見せる糸谷新九段。その表情には、長い道のりを経てたどり着いた達成感があふれていた。
疾走感あふれる棋風で節目の勝利を手に
昇段を決めた一局は、糸谷新九段らしい疾走感あふれる将棋だった。持ち時間が各5時間と設定されていたが、棋界を代表する早指し棋士である両者が対峙したこの対局は、午後2時25分という早い時間に終局。消費時間は糸谷新九段が2時間12分、鈴木九段が1時間31分という早業だった。
鈴木九段の速攻を受け止めると、カウンターで一気に局面を決めるという見事な展開。122手で勝利を収め、記念すべき250勝目を華麗に飾ったのである。
12年にわたるスローな歩み
しかし、八段から九段への道のりは決して平坦ではなかった。糸谷新九段は2014年、26歳で竜王を獲得し、棋士として初めてのタイトルを手にした。当時、翌年の防衛を果たせば規定により九段昇段となる可能性があったが、その夢は果たせず。
それから12年。激動の将棋界において、AIの台頭など多くの変化が訪れる中でも、自らの棋風を貫き通し、勝利を積み重ねてきた。250もの白星は、一つひとつが確かな歩みの証なのである。
「積み重ねてきたものの証明なので上がれてよかったなと思います。長かったです」と糸谷新九段は感慨深げに語る。その一方で、「棋士生活の半分以上は八段だったので、しばらくは言い間違えると思います。色紙の段位を書き間違えないのが当座の目標です」と笑顔で付け加えた。
九段として臨む名人戦第2局
糸谷新九段は現在、第84期名人戦七番勝負(朝日新聞社、毎日新聞社主催、大和証券グループ特別協賛)で藤井聡太名人(23)に挑戦中だ。4月8、9日の第1局では敗れたものの、九段昇段という新たな気持ちを胸に、4月25、26日に青森市で行われる第2局に臨む。
タイトル戦期間中の昇段は極めて珍しく、第1局は糸谷八段として、第2局以降は糸谷九段として戦うことになる。この異例の状況が、今期の名人戦にさらなる注目を集めている。
広島市出身の37歳、将棋界の重鎮として
糸谷哲郎新九段は広島市出身。2006年に17歳で四段(棋士資格)に昇段し、プロ棋士としての道を歩み始めた。現在は日本将棋連盟の常務理事も務めており、棋士としてだけでなく、将棋界の発展にも尽力している。
12年という歳月を経てたどり着いた九段という称号。それは単なる段位の変化ではなく、一棋士としての成長と継続的な努力の結晶である。糸谷新九段は今後、最高段位の棋士として、そして名人戦挑戦者として、将棋界に新たな歴史を刻んでいくことだろう。



