カヌーを楽しむ人々が集う福島県玉川村の複合型水辺施設「乙な駅たまかわ」に、水上レジャーの拠点「カヌーみなと」がある。江戸時代の俳人松尾芭蕉も訪れた阿武隈川の景勝地・乙字ケ滝近くに位置し、カヌーやカヤック、サップ(スタンドアップパドルボード)を楽しめるスポットとして注目を集めている。
川面からの新たな魅力
乙な駅たまかわの正面出入り口近くには、実物のカヌーが掲示され、訪れる人を出迎える。カヌーの発着場は駅から降りた川岸にあり、乗り方などの指導を受けた後、ライフジャケットを着用して川に出る。実際に漕ぎ出すと、思ったよりも目線が水面に近く、まるでアメンボになったような感覚を味わえる。
さらに進み、国道118号の橋桁をくぐると、建築家隈研吾氏が設計した乙な駅の建物が視界に飛び込む。川面から眺めると、建物全体が大きく見え、存在感が際立つ。対岸には山林の緑が広がり、目にまぶしい。事業を展開する渡辺潤さん(41)は「阿武隈川沿いは進むほどに景色が変わる。水上で遊ぶことで、身近な川の新たな魅力を発見できる」と強調する。
カヌークラブの復活
村とカヌーの縁は深い。趣味でカヌーを自作し操縦していた村観光物産協会長の車田幸司さん(66)が2000年に「玉川カヌークラブ」を結成。最盛期には40人近い県内外の会員が所属し、阿武隈川や猪苗代湖で水遊びを楽しんでいた。しかし、2011年の東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の影響で活動を自粛。以降、解散こそしなかったが、休眠状態が続いた。車田さんは「大人から子どもまで楽しめるカヌーをどうにかして再び盛り上げたかった」と振り返る。
そんな中、2020年に村の「乙字ケ滝かわまちづくり」計画が国土交通省の支援制度に登録された。乙な駅を整備する村の計画を検討する際、車田さんは「カヌーの発着場を設けてほしい」と要望。実証実験を経て、2024年9月28日に乙な駅がオープンし、渡辺さんが水上レジャー事業を手がけ、同クラブが協力する形で村のカヌー文化が復活した。
予約制ツアーと多彩な楽しみ方
カヌーみなとは現在、5月から10月まで「阿武隈川満喫ツアー」を予約制で展開している。同クラブ会員らの手ほどきを受け、約2時間で阿武隈川を巡る。シャワーも15分500円で利用可能。川沿いで開かれるイベントでも体験コーナーを設けている。
乙な駅にはベーカリーやレストランがあり、売店では渡辺さんが社長を務める「あぶくまビール」が施設内の醸造設備で仕込んだクラフトビールなどを取り扱う。マウンテンバイクやロードバイクの貸し出しも行い、サイクリングを満喫することも可能。リピーターも多いといい、渡辺さんは「レジャーも飲食も楽しめる、乙な駅ならではの面白さを発信したい」と力を込める。
7月にはカヌーやサップで川面を移動しながら清掃するイベントも予定されている。開設から今年で2年を迎える乙な駅の活用法は、ますます広がりを見せている。
施設概要
- 住所:玉川村竜崎字滝山12の26
- 交通手段:JR泉郷駅から車で約5分、東北道鏡石スマートインターチェンジ(IC)から車で約10分
- 営業時間:ツアーは午前の部が午前10時~午後0時半、午後の部が午後1時半~同4時
- 料金:中学生以上6600円、4歳以上の子ども5500円
- 問い合わせ先:カヌーみなと(電話)050-1722-0033
観光での活用進む
JR水郡線泉郷駅は、観光面での活用が進んでいる。玉川村内のチェックポイントを巡る昨年6月のサイクルロゲイニングイベントでは、水郡線のサービス「サイクルトレイン」と連動し、参加者が郡山駅から泉郷駅まで列車内に自転車を持ち込んだ。今月28日にも同様のイベントを予定しており、希望者は14日までに申し込む。問い合わせはサイクルヴィレッジたまかわ(メール:cyclevillagetamakawa@gmail.com)へ。



