野馬追まで1カ月、元競走馬と暮らす86歳の騎馬武者「これからも健康でいて」
野馬追まで1カ月、元競走馬と暮らす86歳

国指定重要無形民俗文化財「相馬野馬追」が5月23日に開幕するまで、23日で1カ月となった。相双地方では、かつて中央競馬で活躍した元競走馬たちが大切に飼われ、伝統の神事で雄姿を見せてきた。福島県南相馬市原町区の住宅街にある木幡光政さん(86)宅の広々とした馬場では、白い鼻筋が特徴の元競走馬「ダコール」が心地よい日差しを受け、くつろいでいる。

ダコールは名馬ディープインパクトを父に持ち、2015年に重賞レースの新潟大賞典(G3)を制した。レース後半の力強さを武器に、G1の天皇賞やマイルチャンピオンシップも走った。17年に9歳で引退し、木幡さんの元に数年前にやってきた。現在は18歳となった。

「おとなしくて、人なつこいんだ」と木幡さんが話すと、ダコールは顔をすりつけるように寄ってくる。木幡さんの1日は、「おう、おはよう」とダコールに声をかけることから始まる。朝に馬場に放し、餌やりは朝と夕方。もみ殻でふかふかの寝床を用意し、「帰るよ」と声をかけるとダコールは小屋に戻る。爪に油を塗る作業も日課で、毎年、健康を願ってお札を掲げる。蚊が苦手なため、蚊帳も作った。

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木幡さんは40年以上、野馬追に出陣し、自身が乗る元競走馬を飼育し続けてきた。自宅では戦前にも農耕馬を飼っていた。「ずっと馬と一緒」とほほえむ。ダコールは毎年、野馬追で堂々とした姿を見せてきたが、今年は木幡さんが別の馬で出陣し、ダコールには息子の徳広さん(60)が乗る予定だ。

競走馬は多くが7~8歳で引退し、20歳を超えると長生きといわれる。すべての馬が第二の人生を歩めるとは限らない中、野馬追は元競走馬たちが再び輝きを放つ大きな舞台でもある。木幡さん宅では、野馬追を引退した馬も静かな時間を過ごす。元競走馬「ゴッドオブチャンス」は、02年に京王杯スプリングカップ(G2)を制し、引退後20年ほど前から木幡さんと共に過ごす。野馬追でも長く活躍したが、4月で28歳を迎えた“おじいちゃん”だ。体調を気遣い、昨年から野馬追には出ていないが、人なつこく、今も元気いっぱいだ。

2頭のサラブレッドと穏やかな時間を送る木幡さんは、「これからもずっと世話をしたい。愛情があるから」と語る。出陣を待つ騎馬武者の目には優しさがにじんでいた。

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