日本最大級の読書会「猫町倶楽部」、活字離れの中で20年続く人気の秘密
猫町倶楽部、活字離れの中で20年続く人気の秘密

社会 日本最大級の読書会、名古屋の「猫町倶楽部」 活字離れの中で20年続く人気の秘密は… 2026年4月29日 10時00分 (4月29日 10時31分更新)

出会いの場、孤独感の解消の場…。読書会が近年、書店や企業などさまざまな場で開かれ、存在感が高まってきている。その一つ、名古屋市に拠点があり年間延べ8千人が参加する日本最大級の団体「猫町倶楽部(くらぶ)」が今年、発足20年を迎えた。社会の活字離れが指摘される中、参加者同士が対話しやすい場づくりを重視した活動が人気を呼ぶ。(堀井聡子)

多くの参加者でにぎわう猫町倶楽部の読書会

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4月中旬に同市名東区で開かれた会は、約40人が6班に分かれ、事前に読んできたアイルランドの短編集の感想を語り合った。

初参加から常連まで2時間しゃべり通し。ゲストにこの小説を邦訳した翻訳家の柴田元幸さんも招かれ、背景となるアイルランド文化などにも話が及ぶ。福井県の女性・Yokoさん(ハンドルネーム)は「自分と全く違う考えを聞くのが楽しい」と笑顔で話した。

「他人の意見を否定しない」。読書会のルールはシンプルだ。山本多津也代表(61)は「自分のことを話すのが苦手な参加者も、本の感想としてなら自分が出せる」と、人気の秘訣(ひけつ)を語る。

猫町倶楽部は2006年、住宅リフォーム会社を経営する山本さんが同業の仲間ら4人でビジネス書の読書会を開いたのが始まり。交流サイト(SNS)で広まり、00年代のビジネス書ブームを追い風に参加者が増加。選書の軸は文学作品に移り、主に「1人ではなかなか読み切れない、脳が汗をかく本」(山本さん)を選ぶ。

読書会は現在、年間300回を超える。有料で約300人の登録会員以外にも回ごとの飛び入り参加ができる。友だちづくりの場にもなり、会員同士で結婚した夫婦は約160組に上っている。

読書を社会学の視点で研究する立命館大の桜井政成教授は「ここ10年ほどで誰でも参加できる会が目立ってきた」と指摘する。その理由として「第3の居場所として孤独感の解消にもつながる」と話す。欧米では受刑者を対象に読書会を開く例もあるという。

猫町倶楽部はコロナ禍でオンライン中心になったが、5月からは対面で開く割合を増やすなど内容を刷新し、団体も「猫町.」に改称する。山本さんは「社会が二極化する今だからこそ、違う考えに出合うことで自分の世界を変えていける場にしたい」と語った。

ルーツは江戸時代に

日本で盛んになっている読書会。そのルーツは江戸時代初期にさかのぼる。

愛知教育大の前田勉名誉教授(日本思想史)によると、17世紀には武士が中国の歴史書を読み、意見を交わす「会読(かいどく)」が私塾で開かれていた。「武芸で身を立てた武士の時代において学問は余暇。身分と関係なく実力を示せる対等な会読の場は、息抜きになった」と指摘する。

私塾にとどまらず、江戸幕府の昌平坂学問所でも各藩のエリートたちが会読を行った。幕末には吉田松陰(1830~59年)の松下村塾でも取り入れられ、政治を議論する場に発展。前田名誉教授は「会読で互いを認め合う力が鍛えられ、横のつながりが生まれたことで維新につながったのでは」と語った。

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