中部電力労組、春闘交渉で異例の対応 金額提示せず「適正年収」要求
中部電力の労働組合は、2026年の春季労使交渉(春闘)において、賃金体系を底上げするベースアップ(ベア)を含む賃上げや賞与について、要求する具体的な金額を示さずに経営側との交渉を開始した。これは18日に経営側に提出された春闘要求で明らかになった。同組合は、浜岡原子力発電所(静岡県)を巡る不正事案の影響を踏まえ、「適正な年収水準」の実現を求める方針に転換した。
浜岡原発不正が交渉戦略に影響
昨年の春闘では、労組側は1万2千円のベアを要求し、満額回答を得ていた。しかし今年は状況が一変。春闘に先立つ1月に、浜岡原発の再稼働前提となる耐震データに不正が判明し、再稼働に向けた審査が白紙に戻った。この事態により、同社の経営環境が不透明化し、労組の交渉戦略に直接的な影響を与えている。
中部電力によれば、労組側は「これまでの組合員の貢献と努力によって成し遂げてきた成果に対する適正な年収水準」を要求したという。ベアの実施の有無を含め、具体的な金額については、今後の労使交渉の中で検討を進めるとしている。
経営不透明化が労使関係に影
浜岡原発の不正問題は、中部電力の事業計画に大きな影響を与えている。再稼働の見通しが立たない状況が続く中、経営の先行きに対する不安が労使双方に広がっている。このような環境下で、労組が従来のような具体的な金額要求を控えたことは、経営状況を配慮した異例の対応と言える。
労働組合のこの判断は、単なる賃上げ要求ではなく、長期的な雇用安定と企業の持続可能性を視野に入れた戦略的転換を示唆している。今後の交渉では、不正問題の収束状況や経営再建の道筋が、賃金交渉の重要な要素となる見込みだ。
中部電力本店が所在する名古屋市東区を中心に、組合員の間では今後の交渉行方に関心が集まっている。地域経済への影響も懸念される中、労使双方が合意点を見いだせるかが注目される。



