元劇団四季俳優が住職に ライオンキング経験を生かし読経で地域に光を
元劇団四季俳優が住職に ライオンキング経験で読経

元劇団四季俳優が仏の道へ 美声の読経で地域に希望を届ける

北海道小樽市の正行寺の本堂に響き渡る読経。その抑揚に富んだ美声は、檀家の葬儀に参列した人々から「うちにも来てくれないか」とたびたび指名を受けるほどだ。この声の主は、かつて劇団四季のミュージカル「ライオンキング」にも出演した元俳優、岩本竜憲さんである。現在、同寺の住職として、舞台で培った経験を生かし、仏教の教えを通じて地域に光を放っている。

キャッツに憧れ劇団四季へ 厳しい修行を経て舞台に立つ

岩本さんが舞台の世界に目覚めたのは、小学4年生の時。母に連れられて札幌市内で観た劇団四季の「キャッツ」だった。都会のごみ捨て場を舞台に、懸命に働く猫「スキンブルシャンクス」が星を見上げて歌う姿に心を打たれ、「劇団四季の俳優になって舞台に立つんだ」と決意した。

引っ込み思案を克服するため、学級委員や少年野球チームの主将を務め、中学生で上京後は演劇部に入部。声優オーディションで経験を積み、四季出身の指導者から「入団できる力はある」と評価された。高校3年で劇団四季のオーディションに挑戦し、応募者約2000人の中から合格を勝ち取った。

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2000年に正式入団後は、音楽大出身者やバレエ経験者ら優秀な同期に刺激され、朝は誰よりも早く稽古場に来て、夜は遅くまで練習に明け暮れた。初舞台では高揚感よりも責任感に震え、その後もライオンキングなど多くの作品に出演を重ねた。

挫折と再起 仏教との出会いで新たな道を見出す

しかし、高校3年で本格的にダンスを始めた遅れを取り戻そうと無理を重ね、けがが絶えず、2002年に一度退団。舞台への思いを断ち切れず、半年後にオーディションを受けて復帰を果たすも、念願のスキンブルシャンクス役は解釈の違いで叶わず、腰のけがもあり2度目の退団を決意した。

一般企業でITエンジニアとして働く中、道内出身の妻と出会い、2008年に結婚。妻の実家が寺であったことから仏教に関心を持ち、「生きとし生けるものが救われる」という教えに新鮮な感動を覚えた。仏の道を志し、2年かけて僧侶の資格を取得。札幌市内の寺で修行を積み、2015年に9年間不在だった正行寺の住職に就任した。

舞台経験を生かし 住職として地域に貢献

現在、岩本さんは法話ではっきりとした発声と分かりやすい言葉で教えを伝えるよう心がけている。子ども向けの演劇教室を主宰し、教え子が劇団四季主催のミュージカルに出演するまでに成長するなど、教育面でも貢献。地元ラジオ局で月1回パーソナリティーを務め、仏教の教えや四季時代のエピソードを披露するほか、観光客向けの宿坊も始めるなど、寺の魅力発信に努めている。

地域を元気にしたいという思いは、仏教の教え「青色青光 黄色黄光 赤色赤光 白色白光」に基づく。それぞれの花が自分の色のままで光を放つことは尊いという意味で、岩本さん自身も劇団員や会社員、住職と自分らしく歩んできたように、「ありのままの自分を認める助けとなる言葉を、多くの人に届けたい」と語る。

かつて憧れたスキンブルシャンクスのように、寺という新たな舞台で、誰かのために駆け回る日々が続いている。

プロフィール

岩本竜憲(いわもと・たつのり)

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  • 1981年、札幌市出身。
  • 法政一高(現・法政高、東京都)卒業。
  • 妻と中学生、高校生の息子2人の4人家族。
  • 趣味は海外旅行で、米国でミュージカル観劇や家族で韓国旅行を楽しむ。