三重県がタクシー運転手を「伊勢志摩の物語を語る執事」に育成へ
三重県の伊勢志摩観光コンベンション機構は、地元のタクシー会社向けに訪日外国人客(インバウンド)対応のガイドラインを策定した。運転手たちに伊勢志摩の案内人として、地域ならではの価値を「物語」として伝える「バトラー(執事)」のような役割を担ってもらう取り組みが始まった。まるで「タイヤのついた執事」のように、観光客に寄り添うサービスを目指す。
富裕層誘客に力を入れる背景
同機構は欧米やオーストラリアなどから訪れる富裕層の誘客に注力している。こうした層は旅行先で「その土地でしか味わえない価値」を重視する傾向が強く、人との出会いや心身の癒やしを求めるという。ガイドラインでは、運転手に単なる名所や知識の紹介にとどまらず、自然と生活の共存、海女文化と豊かな海産資源、神宮と参拝文化などを軸に、地域の価値を自分の言葉で「物語として語ること」を求めている。
運転手を「唯一無二の親友」に
運転手独自の人脈や地域の情報も活用し、最適な旅行計画を提案できるようにする。目指すのは、自然な会話や表情から旅行者のニーズを読み取る「唯一無二の親友」としての役割だ。須崎充博専務理事は「駅や空港からタクシーに乗る観光客にとって、運転手は地域の『第一印象』に直結する」と指摘する。
機構によると、観光地域づくり法人(DMO)がこうした指針を策定するのは全国でも珍しいという。機構は地元のタクシー事業者と連携し、ガイドラインを基に運転手向けの研修会を開催するなどして育成をサポートする方針だ。
外国人観光客増加と課題
昨年に伊勢神宮を参拝した外国人は計11万4750人で、過去最多を記録するなど、外国人対応の必要性は高まっている。一方、運転手不足に直面する事業者にとって、訪日客向けのサービスを磨くのは後回しになりがちな現状もある。現時点で地域に英語が堪能な従業員は多くないが、既に英語が得意な人材を採用し、対応を図っている会社も存在する。
須崎専務理事は「満足度が高まり利益が増えれば、運転手の仕事の魅力アップにもつながるはずだ」と期待を寄せる。この取り組みが成功すれば、伊勢志摩の観光競争力向上に大きく貢献することが見込まれる。



