「ナイトスクープ」批判で浮上したヤングケアラー問題、当事者女性がSNSの影響に警鐘
ヤングケアラー当事者、SNS批判の影響を懸念「相談できなくなる」 (07.03.2026)

「ナイトスクープ」批判が投げかけたヤングケアラー問題の本質

先日、若年層による家族の介護や家事を担う「ヤングケアラー」について、改めて社会の関心が高まる出来事があった。朝日放送テレビが放送するバラエティ番組「探偵!ナイトスクープ」において、日常的に家事を担当する小学6年生の男児をタレントが手伝う様子が紹介された。この内容に対し、SNS上では「ヤングケアラーではないか」といった両親への批判が相次ぎ、同局は番組内の演出が「男児ばかりが家事・育児をしている印象を与えてしまった」と謝罪する事態に発展した。

「家の手伝い」と「ヤングケアラー」の境界線

一方で、SNS上には〈家の手伝いするのは普通じゃないの?〉〈ヤングケアラーと家事手伝いの線引きをしてほしい〉といった声も見られた。この疑問に対して、ヤングケアラー研究の第一人者である大阪公立大学の浜島淑恵教授(社会福祉学)は明確な見解を示す。

「ヤングケアラーの場合、子ども自身に『自分がやらないと生活が回らない』という責任感が生じる点が、一般的な家事手伝いとは根本的に異なります」と浜島教授は説明する。国の定義では、ヤングケアラーとは障害や病気のある家族に代わって家事を行う者、あるいは幼いきょうだいの世話を担う者などを指す。教授は「周囲が勝手に負担がないと判断せず、適切な支援を提供することが不可欠です」と強調した。

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当事者女性が語る実体験とSNSへの懸念

では、実際にヤングケアラー経験を持つ人々は、今回の出来事をどのように受け止めているのだろうか。支援団体の紹介により、東京都内在住の34歳女性に話を聞くことができた。女性は小学生の頃に両親が離婚し、高校入学時に母親がうつ病とメニエール病と診断され、働けなくなったという。

家計を支えるため、女性は平日の放課後に約5時間、休日は朝から夜までアルバイトに励んだ。母親の体調が悪化した際には、帰宅後に家事をこなし、深夜まで母の相談に乗ることも少なくなかった。しかし当時、周囲に相談することはできなかったという。母親から家庭内の事情を話すことを禁じられ、「自分でやるしかない」と思い込んでいたからだ。

母親の体調が少し安定した後、こうした生活は2年ほどで一段落したが、女性は「なぜ自分はこんな生活なのだろうと、常にイライラしていた」と振り返る。約6年前に「ヤングケアラー」という言葉を知り、2022年からは支援団体に所属。自身と同じ境遇の人々の相談に乗っている。

女性は今回のSNSでの批判的投稿について、深刻な懸念を表明する。「ヤングケアラーの疑いがあるとされた子どもの親が中傷される光景を目にすると、当事者たちは誰にも相談できなくなるかもしれません。SNSで投稿する前に、その先に何が起こるかをしっかり考えてほしい」と訴えた。

専門家が指摘する過剰批判の危険性

浜島教授も同様の懸念を共有する。「子どもは親を助けようと懸命にケアをしています。親子の間に築かれてきた関係性を否定するような過剰な批判は、子どもがSOSの声を上げるのをやめさせてしまう可能性があります」と指摘する。教授は、ヤングケアラー問題においては、単なる批判ではなく、適切な理解と支援の拡充が何よりも重要だと強調した。

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今回の「ナイトスクープ」を巡る議論は、ヤングケアラーへの社会的認知を深める契機となった。しかし同時に、SNSを介した安易な批判が、当事者をさらに孤立させるリスクも浮き彫りにした。社会全体が、単なる「家事手伝い」と「ヤングケアラー」の違いを理解し、支援を必要とする子どもたちの声に耳を傾ける環境づくりが急務と言えるだろう。