大津市の幼稚園教諭給与引き下げ案に反発拡大 待機児童最多の背景で「教育の質低下」懸念
大津市の幼稚園教諭給与引き下げ案に反発拡大

待機児童最多の大津市で幼稚園教諭給与引き下げ案に激しい反発

待機児童数が2年連続で全国最多となっている滋賀県大津市において、市立幼稚園教諭の給与体系を見直す条例改正案が市議会で審議されている。この改正案は、幼稚園教諭の給与を水準の低い保育士に合わせる内容となっており、「実質的な賃金引き下げ」として、ソーシャルメディアを中心に批判的な投稿が爆発的に広がっている。

「物価高なのに賃下げ?」SNSで炎上する反対の声

条例改正案が提出された2月19日以降、「物価高なのに賃下げ?」「保育士の給与を上げればいい」といった反対の声がSNS上で急増。市人事課には電話やメールで多くの意見が寄せられており、ある若手市議は「大津では過去にない『炎上』だ」と状況を説明する。改正案に反対する署名は既に5万筆以上集まっており、反発は収束する気配を見せていない。

見直しに反対する市立幼稚園教諭らが思いを書き込んだ用紙は、1月に市側に提出されている。市教職員組合の試算によれば、改正案が実施されると、12年目の職員で月約2万7千円、年間で約40万円の減収となる可能性があるという。

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待機児童問題と給与見直しの背景

大津市は2024年に184人、2025年に132人と、2年連続で待機児童が全国最多となっている。保育士不足の影響で、公立保育園では平均で定員の約65%しか受け入れられていない現状がある。一方で市立幼稚園は定員割れが続いており、市は4月から幼稚園と保育園の職員を「教育保育職」に統合し、配置を柔軟にして保育士不足の解消を図る考えだ。

なぜ給与体系を「低い方」に合わせるのかについて、市側は「教育職」である幼稚園教諭よりも「行政職」の保育士の方が、他の市職員の給与体系に近いことを理由に挙げている。「先行する他都市の例を参考に、待遇の均衡を考慮した」と説明している。

現場の不安と市長の強気姿勢

幼稚園教諭の反発は大きく、若手教諭は「今のご時世になぜ下げるのか」と不安を隠さない。別のベテラン教諭は「賃下げで教育の質が下がるとは思われたくない」と話す一方、「市は就学前教育をどうでもいいと思っているのか」と憤りを露わにしている。

市は組合との賃金交渉が妥結に至らないまま、2月市議会に条例改正案を提出。市議からも疑問が噴出し、今月2日の本会議では、佐藤健司市長が「幼稚園の現場に不安を与えており大変申し訳ない」と陳謝した。しかし、市長は「議案の取り下げは考えていない」と強気な姿勢を崩していない。

市議会内の動揺と請願の行方

給与体系見直しを巡っては、SNSを中心に思わぬ波紋が広がり、市議の間にも動揺が走っている。賃下げをやめるよう求める請願が採択され、見直しが頓挫する可能性も浮上している。

請願に賛成する見通しの会派「市民ネット21」の草川肇議員は、「今までは丁寧に合意形成すると説明していたのに、組合との妥結なく議案が出てきたのは疑問だ」と訴え、組合との交渉継続を市側に迫った。同じく賛成する方針の共産党の杉浦智子議員は「全国から注目され、明らかに風向きが変わった」と請願の採択に期待を寄せる。

一方、昨年11月の市議会では、幼稚園教諭の待遇低下につながらないよう求める決議案が提出されたが、賛成少数で否決されていた。当時反対した最大会派、新和会の八田憲児議員は「市と組合で交渉の最中だったので、賛成は時期尚早だった」と説明している。

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専門家の指摘と今後の展開

京都橘大学の青木美智子准教授(幼児教育学)は、待機児童対策として「幼保一元化」に取り組む大津市の考え自体は理解できるとしつつも、「現場の理解がない賃下げを強行し、教諭に不安な気持ちのまま保育をさせても、質の高い保育はできない」と指摘。市への就職を考えていた学生からも不安がる声が聞かれるとして、「条例改正案はいったん取り下げ、組合と妥結を目指すべきだ」と提言している。

請願を提出した市民団体「就学前教育を守る会」の大塚清高代表は「このままだと教諭の離職が増える心配がある。採択へできるだけ多くの市議を巻き込みたい」と力を込める。議会の対応と条例改正案の行方が注目される状況が続いている。