連載「インクルーシブ教育@japan」では、DO-ITスカラーの歩みを深掘りする。今回取り上げるのは、島根県立大学2年生の松本叶夢さん(22)だ。彼女は小学校時代から「できるくせにやらない子」と周囲から言われ続けてきた。しかし、その原因は見え方の特性にあった。実は、視野の上下がぼやけていて、真ん中の一部しか見えていなかったのだ。
中2まで気づけなかった見え方の特性
松本さんは読書が大好きで、書道も得意だった。忘れ物は多かったが、テストはすぐに終えて高得点を取った。作文はひらがなばかりだが、すらすら書け、内容も面白かった。しかし、周囲からは「できるのにやらない」と誤解され、本人も理由がわからなかった。
原因が明らかになったのは中学2年生の時だった。横書きの文は1、2行ずつ読めるが、縦書きは1行全部が見えなかった。見えた部分から前後を推測して補完していたため、繰り返し読んで内容を理解していた。天気や窓際の光によって見え方が日々変わることも、周りと同じように見えていると思っていたため、誰にも相談できなかった。
小学校時代の教諭の悔やみ
小学校時代の教諭は、「もし当時の小学校にデジタル教科書があれば、彼女は自分に合った使い方を見つけ、あんなに苦しまなくて済んだかもしれない」と振り返る。デジタル教科書があれば、文字の拡大や背景色の変更など、個別のニーズに合わせた調整が可能だっただろう。
三つ目の高校で知った学びの喜び
松本さんは高校を転々とし、三つ目の高校でようやく適切な支援を受けることができた。耳栓をつけ、プリントは緑色の紙に印刷し、緑色のカラーファイルをかぶせた。教科書を読むこととノートテイクはタブレット端末で行うようになった。これにより、学習の負担が大幅に軽減され、学ぶ喜びを知ることができた。
DO-IT Japanプロジェクトの役割
松本さんは、障害や病気のある子どもや若者から社会的リーダーを育てるプロジェクト「DO-IT Japan」の2020年度スカラーに選ばれた。このプロジェクトは、共にインクルーシブな社会の実現を目指している。松本さんは現在、島根県立大学で学びながら、自身の経験を活かして障害のある子どもたちの支援に取り組んでいる。
インクルーシブ教育の課題と可能性
松本さんのケースは、インクルーシブ教育の重要性を示している。適切な支援があれば、障害のある子どもたちも十分に能力を発揮できる。デジタル教科書の普及や合理的配慮の徹底が求められる。また、周囲の理解と早期発見の重要性も浮き彫りになった。
DO-IT Japanは2026年度に20期生を迎える。同プロジェクトは、学校や進学での壁を乗り越えたスカラーたちの歩みを追い、インクルーシブな社会の実現に向けたヒントを提供している。



