閉山期の富士山で外国人遭難が多発
富士山の閉山期にあたる冬季に、外国人登山者の遭難事故が増加している問題を受け、静岡県富士宮市の須藤秀忠市長(79)が「閉山中の富士登山を禁止するルールを作らなければならない」と強く訴えている。近年、外国人登山者の遭難が目立つようになり、極寒で強風が吹き荒れる冬の富士登山の危険性が改めて浮き彫りとなっている。
市長が問題提起、救助隊の危険も指摘
須藤市長は4月10日の定例会見で、遭難救助に当たる消防隊員の安全を念頭に「救助する側も命懸けです。冬の富士山には登らないでほしい」と強く呼びかけた。後日、市長に発言の背景を詳しく聞くと、昨年4月に中国人留学生が遭難しヘリコプターで救助された後、わずか4日後に置き忘れた携帯電話を取り戻すために再び登山し、再び救助された事例を挙げ、「ふざけるなという思いだ」と心境を吐露した。
閉山期の富士山登山道の現状
閉山期の富士山富士宮口5合目では、登山口がバリケードで覆われ、通行禁止を示す看板が設置されている。しかし、その表記は「登山道は通行が禁止」とあり、「登山道以外はOK」とも解釈できる曖昧さがあり、実際に登山が可能かどうか判断しづらい状況だ。また、協議会のガイドラインが定める「万全な準備が必要」などの条件も看板には明記されていない。
今年も相次ぐ遭難事故
今年に入っても外国人登山者の遭難が続いている。3月10日には富士宮口登山道でスウェーデン国籍の女性とニュージーランド国籍の男性が滑落。4月にはポーランド国籍の男性と日本人男性が下山中に頂上付近で滑落し、日本人男性は死亡する痛ましい事故も発生した。いずれのケースも県警が救助出動している。
外国人登山者の増加傾向
国や県の調査によると、開山期の富士宮口における外国人登山者の割合は、2015年の11.4%から2025年には22.4%と倍増している。閉山期については公式統計はないものの、外国人登山者も増加しているとみられる。
冬の富士登山の危険性
元本紙カメラマンで10回以上の冬の富士登山経験を持つ立浪基博さん(66)は、「冬の登山道や斜面は固く凍り付き、滑ったら命はない」と警鐘を鳴らす。2017年3~4月には本紙夕刊で冬の富士山をテーマに連載した経験を持つ。こうした過酷な状況にもかかわらず、富士宮市や国、県などで構成する協議会のガイドラインでは「十分な技術や経験、計画を持った者の登山は妨げない」としている。
法的規制の難しさと今後の課題
閉山期の富士登山について、静岡県富士山世界遺産課の担当者は「法的に登山や入山を禁止することはできない」と説明する。現在は、万全な準備をしていない登山者の登山や、富士山5合目から山頂までの登山道(富士宮、御殿場、須走=静岡県、吉田=山梨県)の通行が禁止されているに過ぎない。同課の担当者は「冬の富士山は危険で登ってほしくないが、法的に禁止できないため、自粛の呼びかけにとどまる」と打ち明ける。
県は日本政府観光局(JNTO)を通じて、冬の富士登山の危険性を多言語で周知し、自粛を要請する取り組みを進めている。また、無謀な登山を減らすため、富山県と山梨県では条例により、富士山を含む冬の3千メートル級の高山で登山届の提出を義務化している。静岡県の担当者は「両県の条例は検討に値する」と述べ、今後の規制強化の可能性を示唆した。



