視覚と聴覚の融合を目指した夭折の画家、チュルリョーニス展
視覚と聴覚の融合を目指し、精力的に作品制作に取り組むも夭逝(ようせい)した芸術家、ミカロユス・コンスタンティナス・チュルリョーニス(1875~1911年)。その歩みを紹介する「チュルリョーニス展 内なる星図」が、東京・上野公園の国立西洋美術館で開かれている。
リトアニアが生んだ天才
チュルリョーニスはリトアニアの地方都市に生まれ、幼少期から音楽の才能を発揮。当初は作曲を学び、音楽教員の資格を取得した。その後、美術に興味を移し、美術学校に入学して絵画制作に取り組んだ。35歳の若さで病により亡くなるまでに、制作した絵画は300点、音楽作品は400点に上るとされる。
音楽性あふれる作品群
今回の展覧会では、絵画80点が展示されている。初期作品《森の囁き》(1904年)は、林立する樹木をハープの弦に見立てており、この頃から音楽性がうかがえる。続いて取り組んだのが自然のリズムを捉えた連作で、8点から成る《冬》(1908年)は、降りしきる雪や雪の中で立つ樹木などを幻想的な筆致で描き、自然の循環を表現した。
より音楽性が際立つのが、音楽用語をそのまま絵画の題名に用いた作品群。《プレリュード》《フーガ》(共に1908年)の二連画では、前者は一艘の舟、後者は人物や塔のシルエットとモミの木が描かれる。また《第3ソナタ(蛇のソナタ)》(1908年)では、3~4楽章で構成されるソナタ形式を模して、各作品にアレグロ、アンダンテ、スケルツォ、フィナーレの副題が付され、主題のヘビのモチーフがさまざまに描かれる。いずれの作品も、じっと見つめていると、どこからかオーケストラの調べが聞こえてくるようだ。
日本初公開の大作《レックス》
本展で最大の目玉は、日本で初公開となる大作《レックス(王)》(1909年)。太陽や星を背景にして、地球のうえに、冠を頂いた王の象徴が鎮座している。何を言おうとしているのか解釈は難しいが、複数の独立した旋律がまとまって一つの曲を奏でるようなイメージが自然と湧いてくる。
なお、同館では葛飾北斎の代表作「冨嶽三十六景」全46図と、一部作品の異なる摺りを併せて紹介する「北斎 冨嶽三十六景 井内コレクションより」も同時開催されている。(三沢典丈)



